リンパ節が腫れていると言われたら。リンパ腫との違い

犬の首や足の付け根にしこりが見つかると、多くの方が「がんなのではないか」と不安になります。リンパ節の腫れにはさまざまな原因があり、すぐにリンパ腫と決まるわけではありません。ただし、見た目や触った感触だけで区別することはできないため、適切な評価が重要になります。

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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)

リンパ節はなぜ腫れるのか

リンパ節は、体の中を流れるリンパの「検問所」のような役割をしています。流れてくる細菌やウイルスをチェックし、必要があればその場で処理します。そのため、口の中や皮膚に軽い炎症があるだけでも、処理する仕事が増えて一時的に腫れることがあります。イメージとしては、リンパ節の中で小さな戦いが起きている状態です。実際の診療でも、皮膚炎を繰り返しやすいシーズーで首のリンパ節が腫れているケースや、歯周病によって下顎のリンパ節が大きくなっているケースはよく見られます。こうした場合は、炎症が続く間は同じ大きさで維持されることもあり、原因が落ち着くとリンパ節も徐々に小さくなっていきます。

下顎リンパ節と唾液腺は間違われやすい

首のしこりで特に多いのが、下顎リンパ節と唾液腺の間違いです。下顎リンパ節はあごの下に左右一対で存在しますが、そのすぐ近くに唾液腺(下顎腺・舌下腺)があります。そのため、慣れないと触っただけでは正常な唾液腺なのか、腫れているリンパ節なのか判断が難しいことがあります。実際、学生さんも迷うことがあるくらい、紛らわしい部位です。さらに、唾液腺が腫れている場合には、唾液がたまる「唾液嚢胞」や炎症が原因のこともあり、リンパ節とは異なる対応が必要になります。このように、同じ“首のしこり”でも原因がまったく違うことがあるため、正確な評価が重要です。

注意が必要な腫れ方|リンパ腫の可能性

一方で注意が必要なのが、リンパ腫や転移性腫瘍です。特にリンパ腫では、複数のリンパ節が同時に腫れることが多く、左右対称に大きくなることもあります。触っても痛みがないまま、徐々に大きくなっていくのが特徴です。ただし、これらの特徴がそろっていても、それだけでリンパ腫と断定することはできません。逆に、炎症でも似たような見え方をすることがあります。つまり、リンパ節の腫れは「見分けるもの」ではなく「調べるもの」です。

見た目ではなく検査で判断する

実際の診療では、細い針で細胞を採取する「細胞診」を行うことで、炎症なのか腫瘍なのかを判断します。この検査は比較的負担が少なく、その場である程度の方向性がわかることも多いです。必要に応じて血液検査や画像検査を組み合わせ、全身の状態も含めて評価していきます。

受診の目安|様子見してよいかの判断

リンパ節の腫れは、炎症による一時的な変化のこともありますが、リンパ腫などの腫瘍性疾患が原因となることもあります。特に中高齢(目安として6歳以上)の犬では、リンパ腫の可能性も考慮する必要があるため、早めに診察を受けておくと安心です。一方で若い犬や、皮膚炎・歯周病など明らかな原因が考えられる場合には、短期間の経過観察が選択されることもあります。ただし、しこりが2週間以上続く場合や、大きさが変わらない、あるいは徐々に大きくなっている場合は、検査を検討することが重要です。また、食欲低下や元気消失、体重減少といった全身の変化がある場合は、年齢に関わらず早めの検査が必要です。リンパ節の腫れが一時的な反応なのか、別の病気のサインなのかを見極めるためにも、このタイミングは重要です。

まとめ|迷ったら「調べる」が基本

リンパ節の腫れは、よくある変化である一方で、重要な病気のサインであることもあります。炎症による一時的な腫れであれば自然に改善することもありますが、リンパ腫のような疾患が隠れている可能性も否定できません。

迷ったときは「様子を見る」かどうかを一人で判断するのではなく、検査によって状態を確認することが大切です。

FAQ

リンパ節が腫れている=がんですか?
必ずしもそうではありません。皮膚炎や歯周病などの炎症でもリンパ節は腫れることがあります。ただし、見た目だけでは区別できないため、必要に応じて検査で確認することが重要です。

リンパ腫かどうかは触ればわかりますか?
わかりません。大きさや硬さ、痛みの有無だけでは判断できないため、細胞診などの検査が必要になります。

どれくらい様子を見てもいいですか?
明らかな原因がある場合でも、2週間以上変化がない、または大きくなる場合は検査を検討します。中高齢の犬では早めの受診が安心です。

痛みがなければ大丈夫ですか?
痛みがない場合でも注意が必要です。リンパ腫では痛みがないまま大きくなることが多いため、「痛くない=安心」とは言えません。

どんな検査をしますか?
一般的には細い針で細胞を採取する細胞診を行います。負担が少なく、その場で方向性がわかることも多い検査です。

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