AAHA Dental Care Guidelines for Dogs and Cats 2019を読んで

歯科診療の基本から、麻酔、歯周病治療、ホームケアまで、思っていた以上に幅広い内容でした。

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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)

犬でも必要に応じて抗不安薬を使う

猫ではガバペンチンなどを使うことがありますが、犬でも不安や恐怖が強い場合には、来院前から抗不安薬を使用することが勧められていました。犬ではトラゾドンが例として挙げられています。

来院時の恐怖や不安を減らす考え方については、犬や猫が動物病院を嫌がるときの対策でも説明しています。

すべての犬に投与するわけではありませんが、歯科診療でもストレスを減らすことは大切なのですね。

バネ式開口器を使わない

バネ式の開口器は、口を開けすぎることで血流を障害し、筋痛、神経痛、失明、顎関節の外傷などを引き起こす可能性があるため、使用しないよう勧められています。

失明は聞いたことがあります。特に猫では注意が必要です。口を大きく開ければ処置しやすい、というわけではないようです。

歯科用X線を撮り、一本一本記録する

歯科診療では、口腔内X線撮影が重要です。見た目には正常な歯でも、歯根や歯槽骨に病変が隠れていることがあります。

全顎の口腔内X線を撮影し、一本一本の歯について、歯周ポケット、動揺、歯肉退縮、欠損や破折などを記録します。単に歯石を取るのではなく、歯ごとに診断して治療計画を立てる、という考え方です。

現像液を使っていたころに撮影したことがありますが、うまく撮れた記憶がありません。デジタル化など、テクノロジーの進歩で撮影しやすくなっていることを期待しています。

ポリッシングは細かい研磨剤で

以前は、荒削り用と仕上げ用の2種類の研磨剤を使うものだと思っていました。しかし、ガイドラインでは細粒の研磨ペーストを使用し、粗い研磨剤は避けるよう勧められています。

粗い研磨剤はエナメル質を傷つける可能性があるためです。歯面をきれいにするだけでなく、傷をつけずに滑らかに仕上げることが大切なのですね。

組織再生療法(GTR)

組織再生療法(guided tissue regeneration:GTR)は、歯周病で失われた歯の支持組織をできるだけ再生させ、歯を保存するための歯周外科だそうです。

歯槽骨だけでなく、歯根膜やセメント質などの再生を目指します。すべての歯周病に適応するわけではなく、病変の形態や残っている支持組織、術後のホームケアなどを考慮して選択する治療です。

実際、どれくらいうまくいくのでしょう。

バリアシーラントとは?

バリアシーラント(barrier sealant)は、歯の表面に薄い保護膜を形成し、プラーク(細菌性バイオフィルム)が付着・蓄積しにくくするための歯科用コーティング材です。

歯科清掃後に専門家が塗布する製品があり、ホームケア用ジェルを継続するタイプや、数か月ごとに再塗布するタイプが紹介されています。ただし、歯磨きや歯周病治療の代わりになるものではありません。

OraVet Barrier SealantやSANOS Dental Sealantなどがありますが、日本での正規流通は確認できませんでした。国内でも普通に使えるようになると便利そうです。

局所麻酔も重要

歯科処置では、全身麻酔に加えて局所麻酔を行うことが重要です。歯科神経ブロックによって鎮痛を得ることで、必要な吸入麻酔薬の量を減らし、血圧の維持や換気抑制の軽減にもつながります。
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眼窩下神経ブロックはできますが、上顎臼歯の処置では、より近位の上顎神経ブロックが必要になる場合があります。上顎結節アプローチなども、機会があれば学びたいと思いました。

麻酔中に追加病変が見つかったら

麻酔下で口腔内を詳しく検査し、全顎X線を撮影して初めて、正確な治療計画や費用が決まることがあります。

追加処置が必要になった場合は、麻酔中に飼い主へ所見と治療内容を説明し、同意を得ます。連絡が取れない場合は、事前の同意書に具体的に含まれていない追加処置は行わず、後日あらためて実施することが推奨されていました。

広範な病変が見つかった場合には、処置を分ける可能性があることも、あらかじめ説明しておく必要があります。

読み終えて

全顎の口腔内X線を撮る。一本一本プローブで歯周ポケットを確認して記録する。歯石を除去し、必要に応じて歯肉縁下をキュレットで清掃する。そしてポリッシング。局所麻酔も使う。

さらに、国内で入手できればバリアシーラントという選択肢もあります。

ここまできちんとやるとなると、もはや「歯石取り」という感じではありません。歯科用X線の撮影やチャート作成だけでもかなり時間がかかりそうですし、その間ずっと全身麻酔を管理する人も必要になります。

いったい何時間かかって、いくらの診療になるのでしょう。

ガイドラインを読むほど、犬猫の歯科診療は思っていた以上に本格的な医療だと感じました。

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