犬猫のアレルギー性皮膚疾患について、診断から治療、長期管理までをまとめたガイドラインです。
▼ 現在地:ガイドラインを読む > 本記事
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
痒みを10段階で評価する
痒みについては、「痒い・痒くない」だけではなく、飼い主さんに程度を評価してもらいます。
ガイドラインでは、通常1~10のスケールを使い、10はほぼ常に痒がっている状態としています。治療前後で数字を比べると、薬がどのくらい効いたかも分かりやすくなります。
まず簡単な皮膚検査をする
痒い犬では、最初から「アトピーでしょう」と決めるのではなく、まずminimum dermatologic databaseという基本的な皮膚検査を行います。
皮膚細胞診(スタンプなど)、ノミ取り櫛、皮膚掻爬、必要なら耳垢細胞診などです。寄生虫や細菌、Malasseziaなど、痒みを起こしたり悪化させたりする原因を探します。
検査をしたら、痒みは早めに止める
ここは以前の自分の感覚と少し違いました。
かつてはステロイドは「なるべく最後に使う薬」という印象がありましたが、このガイドラインでは基本的な検査を行ったら、必要に応じてグルココルチコイド、オクラシチニブ、ロキベトマブなどを使い、早い段階から痒みを抑えます。
痒みを我慢させながら原因を探すのではなく、診断を進めながら痒みも治療する、という考え方です。以前よりも柔軟な臨床的なガイドラインになったように思います。
一方、抗菌薬の出番は以前より減った印象です。痒い犬すべてに抗菌薬を使うのではなく、細胞診などで二次性細菌感染を確認し、必要な場合に治療します。
30年ほど前は「皮膚病ならとりあえず抗生物質」という場面も多かった気がしますが、今は必要がある場合に使う、という位置づけになっています。
食物アレルギーは元の食事に戻して確認する
食物アレルギーでは除去食試験を行いますが、除去食で良くなっただけでは確定ではありません。
改善したあとに元の食事を再び与えるチャレンジ試験を行い、痒みが再発することを確認します。これが食物アレルギーを確定する方法です。これをしないと、食事の変更で偶発的に治ったものも食物アレルギーとしてずっと治療することになります。
犬では除去食試験は4~12週間、90%以上を拾うには8週間程度必要とされています。
猫は「隠れて舐めている」ことがある
猫では、飼い主さんが「痒がっていません」と言っていても安心できません。
人が見ていないところで過剰に毛づくろいする、いわゆるcloset groomerの猫がいます。
左右対称の脱毛などでも、自然に毛が抜けているのではなく、自分で舐めたり噛んだりしていることがあります。
猫では、掻くことだけでなく、過剰なグルーミングも「痒み」の表現として考える必要があります。
皮膚科診療では動物看護師も積極的に参加する
このガイドラインでは、動物看護師の役割についてかなり詳しく書かれていたのも印象的でした。
問診、ノミ取り、細胞診や皮膚掻爬の検体採取、耳洗浄や外用薬の説明、除去食試験のフォローなど、皮膚科診療には看護師が参加できる場面が多くあります。
獣医師だけですべてを行うのではなく、チームで診療することで効率も上がり、飼い主さんへの説明やフォローも充実する、という考え方です。
今回読んで印象に残ったのは、「原因を全部突き止めるまで痒み止めを待つ」のではなく、基本的な検査をしたら痒みを積極的に抑えながら診断を進める、というところでした。
ステロイドの位置づけと抗菌薬の位置づけは、昔自分が習った皮膚科診療からずいぶん変わったように感じました。
▼ ガイドラインを読む に戻る
