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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
慢性肝炎とは
慢性肝炎=肝臓に炎症細胞があることではない。
炎症+肝細胞障害+線維化・再生という組織学的変化を伴う原発性肝疾患として考える。
全身疾患に伴うnonspecific reactive hepatopathy(非特異的反応性肝障害)とは区別する。
原因不明のALT上昇が2か月以上続いたら慢性肝炎を疑う
ALT(Alanine Aminotransferase:アラニンアミノトランスフェラーゼ)は、慢性肝炎を早期に拾うための最も有用な指標。
特に、
「無症状でも、原因不明のALT上昇が2か月以上続く」
場合には慢性肝炎を疑う。
胆汁酸が正常でも、超音波検査が正常でも、早期慢性肝炎は否定できない。
慢性肝炎の確定診断には肝生検が必要
慢性肝炎の確定診断には肝生検が必要。
FNA(Fine-Needle Aspiration:細針吸引)や細胞診だけでは確定できない。
過去の報告では、肝生検後の出血性合併症は1.2~3.3%程度。
生検後は6時間が一つの観察の目安で、循環動態が安定し、PCV低下が6~10%を超えなければ、大量出血の可能性は低いとされる。
肝保護薬を使う理屈はあるが、強いエビデンスはない
慢性のnecroinflammatory liver disease(壊死性炎症性肝疾患)では抗酸化防御が低下するため、抗酸化作用を持つ肝保護薬を使う理屈はある。
ただし、SAMe、ビタミンE、ウルソなどの肝保護薬について、犬の慢性肝炎で臨床的利益を示す強いエビデンスがあるわけではない。
Immune-mediated hepatitis(免疫介在性肝炎)
Immune-mediated hepatitis(免疫介在性肝炎)は、病理所見だけで確定するものではない。
病理で疑い、銅・感染症・薬剤性などを除外し、免疫抑制療法への反応も含めて判断する。
免疫抑制療法には、プレドニゾロン、シクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチルなどが使われるが、標準となるプロトコールはまだ決まっていない。
症例の多いIMHAでも第2の免疫抑制薬が決まっていないのだから、慢性肝炎で決まるわけもないだろう、というのが個人的な感想。
慢性肝炎だからといって蛋白制限はしない
慢性肝炎だからといって蛋白制限をする必要はない。
蛋白制限は主に肝性脳症がある場合に考える。
進行例では合併症の管理が重要
進行例では、門脈高血圧、腹水、肝性脳症、凝固異常、消化管潰瘍などの合併症が問題になる。
腹水の利尿薬の第一選択はspironolactone(スピロノラクトン)。
必要に応じて低用量furosemide(フロセミド)を追加する。
血中アンモニアが正常でも、肝性脳症は否定できない。
慢性肝疾患は胃十二指腸潰瘍のリスク因子でもある。
知らない病態があり、そうなんだー、と思ったガイドラインでした。
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