切除が一番、トセラニブが有効かも、という論文です。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41960352
要旨
原発性肺癌(PPC)は、犬の全悪性腫瘍の約1%を占める。本研究では、香港における犬の原発性肺癌(PPC)症例39頭を対象に、治療法別の臨床像および生存転帰について後ろ向き評価を行った。治療群は「手術単独」、「手術+化学療法」、「化学療法単独」、「無治療」に分類した。化学療法プロトコルは、最大耐用量(MTD)化学療法とメトロノミック化学療法に細分化した。進行期(ステージIII以上)の症例が最も多く(n = 27、64.1%)、生存期間は治療群間で有意に異なっていた(p < 0.001)。手術単独群の生存期間中央値が最も長く(568日)であった一方、術後にMTD化学療法を併用した群では、手術単独群と比較して病勢進行までの期間が有意に短かった(143日対427日、p = 0.013)。非手術症例においては、化学療法を行うことで、無治療の場合と比較して生存期間中央値が有意に延長した(p = 0.006)。腫瘍に関連する死亡率は、無治療群で最も高かった(77.8%)。進行期症例に対する化学療法では、57.1%で病勢安定(SD)、28.6%で部分奏効(PR)が得られ、生命を脅かす徴候の出現を遅らせ、生活の質(QOL)を改善する可能性が示唆された。メトロノミック化学療法プロトコルでは、MTD化学療法と比較して、無増悪期間が3倍長かった(168日対52日、p = 0.028)。本研究は、無治療の犬の原発性肺癌(PPC)症例における生存転帰を報告した初めての研究であり、また、進行期の犬の原発性肺癌(PPC)管理におけるメトロノミック化学療法の治療的有用性に焦点を当てた、獣医学文献としては2番目の報告である。各治療法の有効性および毒性プロファイルを評価するため、今後さらなる前向き研究が求められる。
治療法の選択にはバイアスがある
ステージが低い症例では手術が選択されやすく、進行癌では化学療法や緩和治療が選択されやすいと考えられます。
また、治療方針には飼い主の希望や経済的事情、担当獣医師の判断も影響します。
したがって、手術群の成績がいいのは自明としても、ステージの異なる治療法を比較するのはナンセンスですね。このステージでこの治療をしたらこうだ、という参考値になります。
トセラニブが効いたのかもしれない
手術を受けずに化学療法を実施した7頭のうち、5頭にトセラニブが併用されていました。
部分奏効を示した2頭は、いずれもトセラニブ併用例でした。
メトロノミック化学療法の成績が良かった理由として、トセラニブ自体の効果、あるいは併用による効果があった可能性があります。
この研究では、それぞれの薬剤の効果を分けて評価することはできません。
無治療群のデータは貴重
無治療群9頭の生存期間中央値は24日でした。
原発性肺癌の研究は外科切除例が中心になりやすく、手術を受けなかった進行癌の自然経過については十分な情報がありません。
今回、無治療群の生存期間や死亡原因が報告されたことは貴重です。
ただし、無治療群は全例に臨床症状があり、44.4%に胸水を認めました。この24日という数字を、すべての無治療の肺癌に当てはめることはできません。
この論文から言えること
ステージが低い原発性肺癌では、外科切除が選択されやすく、予後も良好な傾向があります。
無治療の進行肺癌の生存期間に関するデータは貴重です。
手術を受けなかった犬に対する化学療法には延命効果がある可能性があります。
特にトセラニブを含む治療は有望かもしれませんが、本論文では単独の効果は明らかにはなりませんでした。
