これまで読んできたガイドラインとは少し毛色が違いました。治療法そのものよりも、「その治療が猫と飼い主にとって本当に良いものなのか」を考えるガイドラインです。
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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
予算は、お金だけではない
ホスピス・緩和ケアでいう「personal budgets」には、治療費だけでなく、時間、身体的負担、精神的負担まで含まれます。
飼い主がその治療を続けられるか、そして猫がその治療を受け入れられるかまで考えて、治療計画を作ります。
臨床倫理の4原則
ガイドラインでは、臨床倫理の基本として4つの原則が示されています。
Respect for autonomy:自律尊重
Non-maleficence:無危害
Beneficence:善行
Justice:公正・公平
特に印象的なのは、猫自身の「嫌がる」「受け入れる」といった反応も、できるだけ尊重しようとしていることです。
自宅での処置は、できるところまで確認する
皮下補液などを飼い主に教えるときは、
まず見てもらう → 実際にやってもらう → 自分で説明してもらう
という「see one, do one, teach one」が勧められています。
山本五十六って感じでした。
猫は人より暖かい環境を好む
猫のthermoneutral zoneは人より高く、ガイドラインでは猫の好む環境温度として30~38℃を挙げています。
特に高齢・虚弱なホスピス猫では、安全に使用できる加温ベッドを用意することが勧められています。
もちろん、部屋全体を38℃にするという意味ではなく、猫自身が暖かい場所を選べるようにする、という理解がよさそうです。
シリンジによる強制給餌はしない
ここはかなり明確でした。
Feeding should never be forced.
シリンジ給餌だけでなく、顔や足に食べ物を塗って舐めさせることも強制給餌に含まれます。
病気、痛み、悪心で食べられない猫に無理に食べさせると、食物嫌悪、悪心、痛み、ストレスを悪化させる可能性があります。
そのため、
食べない → 原因となる病気・痛み・悪心を治療する → 食欲を支援する → それでも足りなければfeeding tubeを検討する
という流れになります。
シリンジで無理に食べさせる、ではないそうです。
feeding tubeはcomfort careにもなる
食道瘻チューブなどは、栄養だけでなく、投薬や水分補給にも使えます。
猫を毎回捕まえて薬を飲ませたり、無理に食べさせたりするストレスを減らせるため、このガイドラインではfeeding tubeをcomfort careの一つとして捉えています。
特に食道瘻チューブは、栄養が必要になってから使うだけではなく、投薬や水分補給を楽にする目的で早めに利用するという考え方も印象的でした。
このガイドラインを読んで感じたのは、長く生かすことだけを目標にするのではなく、
痛くないか
怖くないか
嫌なことばかりになっていないか
飼い主との関係が壊れていないか
まで含めてQOLを考えるということです。
「何ができるか」ではなく、「その猫にとって何がよいか」を考えるガイドラインでした。
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