犬猫では、嘔吐や腎疾患、膵炎などがあると「念のため胃薬」を処方することがあります。しかしこのコンセンサスは、潰瘍や消化管出血のリスクが特にない症例に、病名だけを理由として消化管保護薬をルーチンに使用することに疑問を呈しています。
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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
PPIは「胃を守る薬」ではない
PPI(Proton Pump Inhibitor:プロトンポンプ阻害薬)は非常に強力に胃酸分泌を抑えます。
そのため「胃を保護する薬」と単純に考えるより、胃内環境そのものを大きく変える薬と考えたほうがよさそうです。
胃酸を抑えることで、酸性環境を必要とする薬剤の吸収に影響し、腸内細菌叢にも変化を与える可能性があります。
必要だから使う薬であって、「害が少ないから、とりあえず追加する薬」ではありません。
オメプラゾールは腸溶性を壊さない
オメプラゾールは酸に不安定です。
そのため腸溶性製剤を砕いたり壊したりすると、胃酸から薬を守る仕組みが失われ、効果が低下する可能性があります。
オメプラゾールを使うなら、
腸溶性製剤はなるべくそのまま
というのが基本になります。
また、酸関連疾患をしっかり治療する場合には、PPIは1日1回より1日2回投与のほうが十分な胃酸抑制を得やすいとされています。
CKDだから胃薬、ではない
CKD(慢性腎臓病)だから胃酸過多になる、という考えには十分な根拠がありません。
特にIRIS stage 1~3では、予防的に胃粘膜保護薬を投与することを支持するエビデンスはないとしています。
メレナ、重度鉄欠乏性貧血、嘔吐による食道炎など、胃酸抑制が必要と考えられる具体的な理由がある場合に使用します。
ステロイドを使うから胃薬、も支持されない
高用量グルココルチコイドによる胃粘膜障害は、単純な胃酸過多ではなく、粘膜防御機構の低下や胃粘膜血流の変化が重要と考えられています。
スクラルファート、ミソプロストール、H2RAだけでなく、オメプラゾールでも、高用量ステロイドによる胃粘膜障害を明確に予防できることは示されていません。
したがって、
「ステロイドを処方するから胃薬もセット」
というルーチン処方は支持されません。
このコンセンサスを一言でまとめると
かなり単純化すると、
潰瘍・びらん・逆流性食道炎など、「酸が病態に関与している」と考えられるときはPPI。
一方、
嘔吐、胃炎、膵炎、CKD、肝疾患、重症入院、ステロイド投与だから、という理由だけでは胃薬を出さない。
「胃薬を何に使うか」よりも、そもそもこの症例に胃酸抑制が必要なのかを考えることが、このコンセンサスの一番大きなメッセージだと思います。
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