猫の腎臓腫瘍|慢性腎臓病と見分けにくい腎臓のしこり

猫では、高齢になると慢性腎臓病がよく見られます。水をよく飲む、尿が多い、痩せてきた、食欲が落ちた、吐く、毛づやが悪いといった症状があると、まず慢性腎臓病を疑うことが多いです。

ただし、腎臓の数値が悪いからといって、原因がすべて加齢性の慢性腎臓病とは限りません。腎臓に腫瘍ができている場合や、リンパ腫が腎臓に広がっている場合でも、同じような症状や血液検査の異常が出ることがあります。血液検査は、腎臓の働きが落ちていることを教えてくれます。しかし、なぜ腎臓が悪くなっているのかまでは、血液検査だけでは分かりません。

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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)

慢性腎臓病と腎臓腫瘍の違い

慢性腎臓病は、腎臓の細かい機能単位が、時間をかけて少しずつ失われていく病気です。多くは数か月から数年かけて進行します。

一方、腎臓腫瘍では、腫瘍細胞が腎臓の組織を圧迫したり、壊したりして、腎機能を悪化させます。進行が早いものもあり、慢性腎臓病より急に状態が悪く見えることがあります。

特に猫では、腎リンパ腫が重要です。腎リンパ腫では、両側の腎臓が大きく腫れたり、腎臓の形が不整になったりします。腎臓だけでなく、消化管、中枢神経、リンパ節などに病変が広がることもあります。

腎細胞癌は、腎臓そのものから発生する悪性腫瘍です。猫では多くありませんが、片側の腎臓にしこりとして見つかることがあります。腎盂や尿管に関わる腫瘍では、血尿や水腎症が見られることもあります。

注意したい症状

慢性腎臓病でも腎臓腫瘍でも、多飲多尿、食欲低下、体重減少、嘔吐、元気消失は見られます。

その中でも、次のような変化がある場合は、腫瘍や急性の病気も考える必要があります。

急に痩せてきた。
お腹を触ると腎臓が大きい。
血尿がある。
片側または両側の腎臓がエコーで大きい。
腎臓の形が不整に見える。
後ろ足のふらつきや神経症状がある。
腎臓の数値の悪化が急に進んだ。

「高齢だから腎臓病だろう」と決めつけず、腎臓の形を確認します。

検査で何を確認するか

まず血液検査で、BUN、クレアチニン、SDMA、リン、電解質、貧血、炎症の有無を確認します。尿検査では、尿比重、蛋白尿、血尿、細菌、尿沈渣を確認します。

これらは腎臓の働きを見るために重要です。ただし、慢性腎臓病と腫瘍を区別するには、画像検査が必要です。

腹部エコー検査では、腎臓の大きさ、左右差、形、内部構造、しこりの有無、水腎症、周囲リンパ節、肝臓や消化管の異常を確認します。

腎リンパ腫では、腎臓が両側性に大きくなることがあります。腎細胞癌などでは、片側の腎臓に腫瘤として見つかることがあります。

手術や高度治療を考える場合は、CT検査が有用です。CTでは、腫瘍の広がり、血管との関係、リンパ節転移、肺転移、反対側の腎臓の状態を詳しく確認できます。

細胞診や生検が必要になることがあります

腎臓に腫瘍が疑われる場合、細胞診や組織検査が必要になることがあります。

特にリンパ腫では、細い針で細胞を取る検査が診断に役立つことがあります。リンパ腫であれば、手術ではなく抗がん剤治療が中心になるため、治療方針を決めるうえで診断が重要です。

一方で、腎臓は血流が多い臓器です。針を刺す検査には出血のリスクがあります。腎細胞癌などの固形腫瘍では、画像検査で手術適応を判断し、摘出後の病理検査で確定診断を行うこともあります。

どの検査を選ぶかは、腫瘍の見え方、全身状態、凝固機能、治療方針によって慎重に決めます。

治療は腫瘍の種類で変わります

腎リンパ腫では、抗がん剤治療が中心になります。腎臓だけでなく全身の病気として考える必要があるため、外科手術だけで治す病気ではありません。治療への反応がよければ、食欲や元気が改善することがあります。

腎細胞癌などが片側の腎臓に限局し、反対側の腎臓が十分に働いている場合は、腎臓の摘出手術を検討します。反対側の腎機能が弱い場合や、すでに転移がある場合は、手術が適さないこともあります。

進行例では、点滴、吐き気止め、食欲を支える薬、降圧薬、痛み止め、腎臓食、リン管理などを組み合わせます。腫瘍を治す治療だけでなく、腎不全によるつらさを減らす治療も必要です。

まとめ

猫の腎臓病では、慢性腎臓病がよく見られます。
しかし、腎臓の数値が悪い原因が、腎リンパ腫や腎細胞癌などの腎臓腫瘍であることもあります。

血液検査だけでは、腎臓が悪い理由までは分かりません。多飲多尿、体重減少、食欲低下がある猫では、血液検査と尿検査に加えて、腹部エコー検査で腎臓の形を確認します。

慢性腎臓病として治療しているのに進行が早い、腎臓が大きい、血尿がある、左右差がある、しこりが見える場合は、腫瘍の可能性も考えます。

治療は、リンパ腫なら抗がん剤、片側の腎細胞癌なら手術、進行例なら支持療法や緩和ケアなど、病気の種類によって大きく変わります。

「猫の腎臓病」とひとまとめにせず、その猫の腎臓で何が起きているのかを、血液検査と画像検査の両方から確認します。

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