犬に餅を与えることはおすすめできません

餅そのものに、チョコレートやタマネギなどのような強い毒性があるわけではありません。しかし、餅には強い粘りと弾力があり、犬が大きな塊のまま飲み込むと、喉や食道に詰まる危険があります。

特に、お正月など人が餅を食べる機会が増える時期には、テーブルからの盗み食いや、落とした餅を犬がそのまま飲み込む事故に注意が必要です。

執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)

犬にとって餅の一番の危険は窒息

犬は人のように食べ物を十分に噛んですりつぶすとは限らず、大きなものでもそのまま飲み込むことがあります。

餅は粘りが強いため、大きな塊が喉や気道付近に詰まると、呼吸ができなくなる可能性があります。

突然苦しそうにもがく、呼吸ができない、声が出ない、舌や歯ぐきが青紫色になる、意識が低下するといった場合は、完全な気道閉塞の可能性があります。動物病院へ向かうだけでは間に合わないことがあります。口を開け、見える範囲に餅があれば、まず取り除くことが最優先です。取り除けない場合には、異物除去の応急処置を行いながら、動物病院へ連絡・搬送します。

飲み込めたから安全とは限らない

餅が気道を通過しても、食道に詰まることがあります。

何度もえずく、大量のよだれが出る、何度も飲み込む仕草をする、水や食べ物を飲み込めないといった症状がある場合は、食道異物の可能性があります。

また、大きな塊を丸飲みした場合には、消化管異物として胃や腸で問題を起こす可能性も否定できません。

繰り返し吐く、食欲がなくなる、お腹を痛がる、元気がなくなるといった症状がみられた場合も受診が必要です。

包装や脱酸素剤も一緒に食べていないか確認する

市販の切り餅を盗み食いした場合は、餅だけでなく、個包装のフィルムや脱酸素剤、乾燥剤まで一緒に飲み込んでいることがあります。

包装材は消化管異物になる可能性があります。また、脱酸素剤や乾燥剤は製品によって成分が異なり、鉄を含むものなどでは中毒が問題になる場合があります。

見た目だけで成分を判断せず、残っている袋や商品のパッケージを保管し、受診時に持参してください。

動物病院ではどうする?

まず呼吸状態や全身状態を確認し、必要に応じてX線検査や超音波検査などで、食道や胃腸の状態を調べます。

餅や包装フィルムはレントゲンに直接はっきり写らないこともありますが、消化管のガスや拡張など、閉塞による間接的な変化が手がかりになります。

胃や食道に異物が残っている場合には、状態によって内視鏡で摘出できることがあります。すでに腸へ移動して閉塞を起こしている場合には、開腹手術が必要になることもあります。

餅は犬に与えないのが一番安全

犬にとって餅の問題は「毒」ではなく、粘りのある食べ物を大きなまま飲み込むことによる物理的な事故です。

特に小型犬や、食べ物を丸飲みしやすい犬では注意が必要です。

お正月など餅を食卓に出す時期には、犬の届く場所に置かない、落としたらすぐ拾う、個包装や脱酸素剤も片づけることが大切です。

「少しだから大丈夫」と与えるよりも、犬には餅を与えないことが最も確実な予防になります。

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