避妊・去勢手術は、これまで「繁殖予定がなければ行うもの」と考えられることが多かったと思います。今回のガイドラインを読むと、その考え方はかなり変わってきています。通常のガイドラインの5倍くらい分量があります。
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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
避妊・去勢は、すべての犬猫に必須ではない
特に印象的だったのは、
「責任ある飼い主であれば、医学的必要性がなければ未去勢のままでもよい場合がある」
という考え方です。
繁殖させない犬猫を一律に性腺摘出するのではなく、種、性別、犬種・品種、年齢、体格、生活環境、飼い主の管理能力などを考えて個別に判断します。特に大型・超大型犬では、性腺ホルモンを残す方法も選択肢になります。
避妊・去勢のデメリットも考える
重要だと感じたのは、
①大型犬では若齢手術と整形外科疾患との関連
②雌犬では尿失禁
③犬猫とも肥満。犬では一部の腫瘍、内分泌疾患、行動への影響の可能性
です。
前十字靱帯損傷や股関節・肘関節疾患などとの関連が報告されており、「繁殖させないなら、とりあえず避妊・去勢」という考え方ではなくなってきています。
乳腺腫瘍の予防効果
犬では、早期避妊によって乳腺腫瘍が減る可能性はあります。しかし、昔から有名な0.5%、8%、26%という数字ほど、エビデンスは強固ではありません。
一方、猫では若齢避妊による乳腺癌予防効果は、犬より比較的明確です。
手術方法にも選択肢がある
子宮に病変がなく、性腺ホルモンをなくすことが目的であれば、雌犬・雌猫ではOE(卵巣摘出術)が第一選択とされています。
一方、大型犬などでは、卵巣を温存して子宮だけを摘出する方法も検討されます。
手術手技では、卵巣周囲への局所麻酔、two-pass friction knotなどの摩擦結紮、停留精巣を「鼠径管の外・鼠径管内・腹腔内」に分けて考えることなどが印象に残りました。
結紮法は、スクエアノットか外科結び、と思っていました。また、停留精巣も鼠径管に挟まっていることも何度か経験してましたから。
犬と猫では考え方が違う
犬、とくに大型犬では、性腺ホルモンを失うことによる長期的影響が問題になります。
一方、猫では犬ほど性腺温存のメリットが明確ではなく、現在でも避妊・去勢が基本です。
犬では「性腺を取るべきか」そのものを考える時代になり、猫では今も避妊・去勢のメリットが比較的大きいという印象です。
まとめ
犬や猫はクマのような野生動物ではなく、人が家畜化してきた動物です。そのため、望まれない繁殖を防ぐための管理には意味があります。
ただし、「避妊・去勢をすることが盲目的に正しい」わけではありません。
その動物の健康、飼い主の管理能力、生活環境、地域社会まで含めて、その状況に合った繁殖管理を選ぶことが大切なのだと思います。
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