レプトスピラ症というと、川や山に行く犬の感染症という印象がありましたが、このコンセンサスでは、都市部の小型犬を含め、すべての犬に感染リスクがあるとしています。
特に感染源として重要なのがネズミです。ドブネズミでは世界的なLeptospira感染率が約30%、地域によっては80%を超えるとされ、環境条件が良ければ土壌や水中で数週間~数か月生存します。
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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
レプトスピラ症は腎臓だけの病気ではない
急性腎障害が代表的ですが、実際には多臓器疾患です。
肝障害は単純な肝細胞壊死ではなく、Leptospiraによって肝細胞間の結合が障害され、胆汁が血中へ漏れることによる胆汁うっ滞性肝障害が特徴です。
血小板減少、CK上昇、正常血糖にもかかわらず尿糖が出る腎性糖尿、心筋障害、膵炎、肺出血など、さまざまな臓器に異常がみられます。
レプトスピラ症を疑う犬では、呼吸器症状がなくても胸部X線撮影が推奨されています。肺出血は呼吸困難が出る前から画像上認められることがあるためです。
抗菌薬はドキシサイクリンが基本
基本治療はドキシサイクリン 5 mg/kgを1日2回、14日間です。
嘔吐などで経口投与できない場合には、まずアンピシリン、アモキシシリン、ペニシリンGなどを静注し、経口投与可能になったらドキシサイクリンへ移行します。
従来の「最初にペニシリン系で菌血症を抑え、その後ドキシサイクリンで腎臓内の菌を排除する」という方法は、主に急性期には消化器症状のためドキシサイクリンを飲ませにくいことが理由です。
AKIだから腎臓食、とは限らない
レプトスピラ症から回復中の犬では、腎臓食では蛋白質が不足する可能性があります。また、腎臓食の脂肪含有量によっては併発する膵炎を悪化させる可能性も指摘されています。
そのため、できるだけ早期に、高消化性で正常~高蛋白、十分なエネルギーを含む食事を与えることが推奨されています。
また、肝障害があるからといってウルソデオキシコール酸を当然のように使うわけではありません。現在考えられている病態からは有害になる可能性もあり、有効性を支持する十分なエビデンスもありません。
透析は早いうちに
重度の急性腎障害では、透析を「保存的治療がすべて失敗してから行う最後の手段」と考えず、早期に検討します。
IRIS AKI Grade 4、クレアチニン5 mg/dLを超える場合には、透析可能な施設への早期紹介を考慮します。重症レプトスピラ症でも、透析を行った犬の80%以上が回復した報告があります。
輸液管理では過剰輸液を避けることが重要です。無尿または著しい多尿の犬では、尿量だけでなく、場合によっては3時間ごとに体重を測定して体液量を評価します。
レプトスピラワクチンへの印象を更新する
レプトスピラワクチンは季節を狙って接種する必要はなく、このコンセンサスでは、犬種、地域、生活環境にかかわらず、すべての犬への毎年の接種を推奨しています。
理由は、人獣共通感染症であること、重症化・死亡する可能性があること、そして都市部の小型犬を含め、どの犬でも曝露する可能性があるためです。
以前は「レプトスピラワクチンは副反応が多い」という印象がありました。約20年前には、一部のワクチンに牛血清アルブミンが高濃度に含まれ、IgEを介したアレルギー反応に関係した可能性も報告されています。
しかし現在のレプトスピラワクチンについては、蛋白量や蛋白濃度、重篤な副反応率が、ジステンパー・パルボウイルスワクチンや狂犬病ワクチンより高いとはされていません。
人にうつるが、病犬からの感染リスクは高くない
レプトスピラ症は人獣共通感染症ですが、適切な感染対策を行えば、治療中の犬から人への感染リスクは低いとされています。
むしろ重要なのは、犬が感染したということは、飼い主もネズミや野生動物、汚染された環境など、犬と同じ感染源に曝露している可能性があることです。
ドキシサイクリン治療開始後48時間までは犬の尿との接触を避け、尿を処理する際には手袋と眼の保護を使用します。
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