犬の一生を、次の5つのライフステージに分けて考えます。
子犬
若齢成犬
成熟成犬
シニア
終末期
単純に年齢だけで区切るのではなく、その犬の体格、犬種、生活環境、健康状態などを考慮しながら、ライフステージごとに健康管理を変えていくという考え方です。
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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
まず「怖がらせない診療」
犬が不安・恐怖・攻撃性を示す場合には、待合室で他の動物と接触させない、静かな場所へ直接入れる、必要であれば建物の外で最初に対応する、といった工夫を行います。
すべての犬で、
恐怖・ストレスを減らすハンドリング
必要に応じた来院前抗不安薬
問題行動の評価
行動歴・情動状態の確認
を行います。
診察時の不安、恐怖、ストレスもカルテに記録し、次回来院時の対応に活かします。
飼い主と一緒に治療方針を決める
病態を説明する
→ 選択肢を提示する
→ 獣医師としての推奨案を伝える
→ 飼い主の価値観や希望を聞く
→ 一緒に決定する
という共同意思決定を重視しています。
単発値よりトレンドを見る
このガイドラインでは、繰り返し「経時変化を見る」ことが強調されています。
体重、BCS、MCS(筋肉量)、疼痛、歩様、血液検査値などは、1回の数値だけで判断するのではなく、その犬自身の過去の値と比較します。
若く健康なうちから基準値を作っておけば、基準範囲内であっても、その犬として異常な変化を早期に見つけられる可能性があります。
鎮静・麻酔の機会を詳しい健診にも使う
何らかの処置で鎮静・麻酔を行う場合は、
口腔内
腹部触診
整形外科的評価
など、覚醒時には十分にできない身体検査を行う良い機会と考えます。
犬種特異的に必要であれば、避妊去勢時の1回の麻酔を利用して、
遺残乳歯抜歯
未萌出の下顎第一前臼歯の確認
予防的胃固定術
などを一緒に行うことも検討します。
子犬では事故・誤食を強く意識する
子犬では探索行動が強いため、
誤食
異物
有毒植物
薬剤
電気コード
倒れやすい家具
など、病気だけでなく家庭内事故の予防も重要な健康管理になります。
シニアでは環境を犬に合わせる
高齢になると、
移動能力
視覚
聴覚
認知機能
が低下することがあります。
滑り止めを使う、階段を減らす、家具を整理するなど、犬に合わせて生活環境を変えていくことも予防医療の一部です。
筋肉量も毎回評価する
MCSでは主に、
脊椎周囲
肩甲骨周囲
頭蓋骨
腸骨翼
を視診・触診して筋肉量を評価します。
BCSは脂肪量、MCSは筋肉量を見る指標なので、肥満犬でも筋肉量が減少していることがあります。
特にシニアでは、体重だけでなく筋肉量の経時変化を見ることが重要です。
寄生虫対策は「通年」が基本
腸内寄生虫、フィラリア、ノミ、マダニなどについて、年間を通した予防を基本としています。
予防薬を使用していても、生活環境やリスクに応じて便検査やフィラリア検査などを継続します。
災害時や飼い主の病気も想定する
犬の安全管理には、
飼い主が病気になった場合
犬が病気になった場合
事故
自然災害
人為的災害
への備えも含まれます。
マイクロチップや迷子札、医療費の準備なども、広い意味での予防医療として扱われています。
明確なrecommendationを伝える
曖昧な説明よりも、獣医師から明確なrecommendation(推奨)を提示された飼い主の方が、推奨を実行する可能性が約7倍高かったとされています。
「血液検査をしてもいいですよ」
ではなく、
「このライフステージなので、今回はこの検査をお勧めします」
と獣医師として明確な推奨を示し、そのうえで飼い主と相談するという考え方です。
診療費の「予測可能性」も重要
飼い主は診療費がどのくらいかかるのかを事前に把握したいと考えています。
そのため、
予防医療プラン
ペット保険
製品購入の選択肢
などについて利点・欠点を説明し、今後どの時期にどのような検査や予防が必要になるのか、病院として明確に提示することが勧められています。
このガイドラインを一言でまとめると、
犬を単純な年齢だけで管理するのではなく、ライフステージごとに予防・行動・栄養・歯科・寄生虫・ワクチン・検査などを個別化し、その犬自身の変化を生涯にわたって追跡する
という考え方です。
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