執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
精巣総鞘膜を用いた犬の会陰ヘルニア整復術
犬の会陰ヘルニアに対して、去勢手術で採取した精巣総鞘膜をパッチとして利用する方法です。
内閉鎖筋を転移させずに、骨盤隔膜の欠損を自家組織で補強します。
手術方法
まず、閉鎖去勢を行い、精巣総鞘膜を採取します。
総鞘膜を切り開くと、ほぼ長方形の膜が得られます。
次に会陰部を切開し、脱出した臓器を還納します。
総鞘膜を骨盤隔膜の欠損部に配置します。このとき、長方形の長辺を背腹方向に向けます。
総鞘膜は次の4か所に固定します。
- 尾骨筋
- 仙結節靱帯
- 坐骨縁の骨膜
- 内閉鎖筋
縫合糸は2-0~3-0の非吸収性モノフィラメントであるポリプロピレンを使用します。
まず4か所を水平マットレス縫合で固定します。その後、固定点の間を単純連続縫合で閉鎖し、総鞘膜に張力をかけながら骨盤隔膜を補強します。
仙結節靱帯への縫合では、坐骨神経の巻き込みを避けるため、靱帯全体に糸を回さず、坐骨付着部近くで靱帯を貫通させています。
総鞘膜の大きさ
別に調査した71頭の測定結果では、小型犬でも約5×5cmの総鞘膜が採取できました。
去勢手術と同時に採取できるため、人工メッシュや別の採取部位を必要としない点が利点です。
手術成績
未去勢雄犬7頭、計8か所の会陰ヘルニアに使用しました。
追跡期間中央値は13か月で、7頭とも再発は報告されませんでした。
ただし、少数例の研究であり、術後評価は主に電話による聞き取りです。
まとめ
精巣総鞘膜は、会陰ヘルニア整復術に利用できる自家移植材料です。
内閉鎖筋の萎縮が強い症例でも、周囲の筋肉や靱帯に総鞘膜を固定することで骨盤隔膜を再建できる可能性があります。
手術手技が比較的単純で、材料費もほとんどかからない点が魅力です。
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