かつてはACE阻害薬(ACEI)が心不全治療の中心という印象でしたが、今はピモベンダンの存在感が大きくなりました。一方、以前は「カリウム保持性利尿薬」という印象しかなかったスピロノラクトンが、アルドステロン拮抗薬として表舞台に出てきた、というのが今回の印象です。
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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
病期分類について
以前はNYHA分類を目にすることが多かったのですが、現在はACVIMのStage A~Dという分類が使われています。Stage Aは好発犬種など、まだ心疾患が確認されていない高リスク群。Stage Bは心不全を起こしていない段階で、B1とB2に分かれます。
気になったのは、B2とCの境目です。B2は心拡大が治療開始基準に達しているものの心不全歴がない犬、Cは現在または過去に心不全を起こした犬です。肺水腫が治療で改善しても、一度Cになれば基本的にはCのままです。
画像で評価できる心拡大は比較的客観的ですが、心不全の「既往歴」は過去の診療記録や飼い主の記憶にも左右されます。B2とCをひとつの大きなカテゴリーにして、心不全歴の有無をサブステージで分けてもよいのでは、と思いました。
VLASという指標
胸部X線で左房の大きさを評価するVLAS(vertebral left atrial size)という指標が紹介されていました。
側面像で気管分岐部から左房尾側端までの距離を測り、第4胸椎から椎体単位に換算します。エコーが使える環境では出番は少なそうですが、過去画像との比較や一次診療でのスクリーニングには使えそうです。
睡眠時の呼吸数が重要
心不全の在宅管理では、安静時・睡眠時の呼吸数を記録することが重要です。ガイドラインでは、普段の安静時呼吸数からの上昇が、心不全悪化を予測するうえで特に有用とされています。
一般的には睡眠時30回/分未満がひとつの目安とされ、30回/分以上が続いたり、それまでより徐々に増えてきたりした場合には診察を考えます。
大切なのは「30回」という数字だけを見るのではなく、その犬自身の普段の呼吸数から変化しているかを見ることですね。
スピロノラクトンが標準治療に
慢性Stage Cでは、フロセミド、ピモベンダン、ACE阻害薬に加えて、スピロノラクトンが補助薬として推奨されています。
私はスピロノラクトンを「カリウム保持性利尿薬=あまり使わない薬」と頭の中の引き出しに入れていました。
しかし心不全での目的は、単に利尿を強めることではありません。アルドステロンの作用を抑え、心不全に伴う神経体液性反応を抑制することが主な役割とされています。ガイドラインでも、Stage Cにおけるスピロノラクトンの主な利益はアルドステロン拮抗作用と考えられる、と記載されています。
今回のガイドラインでは、病期分類の考え方、VLAS、家庭での呼吸数モニタリング、そしてスピロノラクトンの位置づけが特に印象に残りました。
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