前橋市でも進む地域猫とTNR|野良猫に餌をあげるだけではダメ?

家の近くに野良猫がいると、「お腹を空かせていてかわいそう」と餌をあげたくなることがあります。

猫を助けたいという気持ちは自然なものです。

しかし、餌をあげるだけでは、かえって猫を増やしてしまうことがあります。

前橋市でも、飼い主のいない猫を増やさないためにTNRが進められています。

TNRとは?

TNRは、

Trap(捕獲する)
Neuter(不妊去勢手術をする)
Return(元の場所に戻す)

の略です。

捕獲した猫に不妊去勢手術を行い、元いた場所へ戻します。手術済みの猫は、耳先をV字にカットすることがあり、「さくらねこ」と呼ばれています。

猫が増えることは悪いこと?

猫が増えること自体は、悪いことではないように思うかもしれません。

しかし、限られた地域で動物が増えすぎると、人との共存が難しくなります。

鹿やクマなどの野生動物でも、数が増えて農作物への被害や人との事故が増えると、捕獲して個体数を減らす対応が行われることがあります。

猫でも、増えすぎれば糞尿、鳴き声、発情、ゴミ荒らしなどによる地域とのトラブルが増えていきます。

増えすぎてから「減らさなければならない」となるより、最初から増えすぎないようにする方が、動物にとっても人にとっても負担が少なくなります。

そのための方法が、不妊去勢手術です。

前橋市では、飼い主のいない猫のTNRにも利用できる不妊去勢手術の補助制度があり、現在は1世帯15匹まで、オス3,000円、メス5,000円を上限に補助しています。市も、この制度が殺処分数の減少につながっているとしています。

増えれば、猫自身も苦しくなる

外で暮らす猫が増えると、交通事故、猫白血病ウイルス(FeLV)などの感染症、感染症、ケンカ、飢餓などによって命を落とす猫も増えます。

特に、生まれた子猫がすべて無事に成猫になれるわけではありません。

何もしなければ猫は増えていきますが、無限に増え続けるわけではありません。

増えすぎた先では、事故や病気、食べ物の不足などによって多くの猫が亡くなり、結果として数が抑えられます。

つまり、自然にちょうどよい数になるというより、「生まれる、増える、そして死ぬ」という形で数が調整されてしまうことがあります。
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不妊去勢で殺処分は大きく減ってきた

不妊去勢手術の普及やTNR、譲渡活動によって、猫の殺処分は大きく減ってきました。

かつては全国で年間10万匹を超える猫が殺処分されていましたが、2024年度には4,866匹まで減っています。

今の取り組みを続ければ、「健康なのに行き場がないため処分される猫」をゼロにすることは、遠い未来の話ではありません。

増えてから処分するのではなく、不妊去勢によって増えすぎないようにする。

その積み重ねが、殺処分ゼロに近づく一番現実的な方法です。

餌をあげるなら、その先まで

餌を与えることで猫は生きやすくなります。

しかし、不妊去勢をせずに餌だけを与えれば、さらに猫が増える原因にもなります。

そのため、餌をあげるのであれば、不妊去勢手術を行い、置き餌をせず、トイレや周囲の環境も管理することが大切です。

地域猫とは、単にみんなで餌をあげる猫ではありません。

不妊去勢を行い、これ以上増やさず、今いる猫を一代限り地域で見守っていく。

これが地域猫活動の基本です。

TNRは、猫を嫌って減らす活動ではありません。

「増えすぎたから殺す」のではなく、「増えすぎないようにして、殺処分が必要になる状況をできるだけ作らない」。

そのための取り組みです。

人に慣れていて譲渡できる猫では、新しい飼い主を探し、室内飼育につなげる方法もあります。
室内飼育の猫は幸せ?安全と幸福を両立するために必要なこと

昔から続いてきた、現場での不妊去勢

獣医師を長くしていると、昔からいわゆる「猫おばさん」と呼ばれる方々が、野良猫を連れて来院されることがありました。

「自分が餌をあげている猫がこれ以上増えると困るから、避妊去勢をしてほしい」

そんな相談です。

当時は今のようにTNRという言葉が広く知られていたわけでもなく、行政の補助制度も十分ではありませんでした。それでも、地域の方と動物病院が協力し、野良猫の不妊去勢をできるだけ安く行うという取り組みは、各地で続けられてきました。

そうした活動が少しずつ広がり、やがて行政にも必要性が認識され、不妊去勢手術への補助や地域猫活動の支援につながってきました。
TNRの避妊目標割合は?

そして今、猫の殺処分数は大きく減っています。

昔から地道に続けられてきた取り組みが、少しずつ制度になり、殺処分ゼロが現実的な目標になりつつある。

そう考えると、感慨深いものがあります。

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