犬の認知機能不全症候群(CCDS)は、認知機能と行動の変化によって日常生活に影響を及ぼす、慢性・進行性・加齢関連性の神経変性症候群です。
犬の認知症は以前から知られていますが、統一された診断基準はなく、診断方法や病態の解明はまだ発展途上という印象です。
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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
DISHAA:6つの行動変化
CCDSの症状を6つの領域に分けています。
- D:Disorientation
見当識障害。家の中で迷う、隅で動けなくなる。 - I:Interactions
社会的交流の変化。飼い主との関わりが減る、過度に求める。 - S:Sleep
睡眠障害。昼夜逆転、夜間の徘徊。 - H:House soiling, learning, memory
トイレの失敗、学習・記憶の低下。 - A:Activity
活動量の増減、目的のない歩行。 - A:Anxiety
不安や恐怖の増加。
認知症の初期症状
比較的早期に現れる症状として、次の3つが挙げられています。
- 夜間の落ち着きのなさ
- 日中の活動量の低下
- 飼い主などとの社会的交流の変化
一方、トイレの失敗や空間的な見当識障害は、病状が進行するにつれて認められやすくなります。
夜鳴きや徘徊が目立つようになる前から、認知機能の低下が始まっている可能性があります。
飼い主への質問票は経過観察に有用
DISHAAなどの質問票を利用して行動変化を評価します。
質問票は絶対値より経時的変化を見ることが重要です。できるだけ同じ飼い主に繰り返し記入してもらいます。
7歳から年1回のスクリーニングを開始し、10歳以上では6か月ごとの評価を推奨しています。
CCDSは除外診断
高齢犬の行動変化には、疼痛、感覚機能の低下、全身疾患などが関与している可能性があります。
身体検査、整形外科検査、眼科検査、神経学的検査に加え、血液検査、尿検査、血圧測定を行います。
併存疾患を治療しても認知機能低下を示す行動が持続する場合、CCDSを考えます。
局所的な神経症状や新たなてんかん発作がある場合は、別の脳疾患を疑います。
MRIは脳萎縮の確認と他疾患の除外に使用する
脳萎縮の評価には、視床間橋(ITA)と海馬を使用します。
視床間橋の高さが5 mm未満であることは脳萎縮と関連しますが、体格や犬種による違いがあるため、単独での診断はできません。
MRIは脳腫瘍、脳梗塞、脳炎などを除外する目的でも重要です。
ただし、MRIを実施しなくても、問診、身体検査、神経学的検査、併存疾患の評価によってLevel 1の臨床診断が可能です。
MRIで脳萎縮を認め、脳脊髄液検査が正常であれば、診断の確実性が高いLevel 2となります。
このガイドラインの実用的なポイントは、高齢犬の診察でDISHAAを意識して問診し、定期的に行動変化を追跡することです。
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