犬のIMHA(Immune-Mediated Hemolytic Anemia:免疫介在性溶血性貧血)は、現在でも最大で約半数が死亡する可能性がある重篤な疾患とされています。
▼ 現在地:ガイドラインを読む > 本記事
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
治療は「免疫抑制」だけではない
治療の中心はプレドニゾロンなどのグルココルチコイドですが、IMHAでは血栓症、特に肺血栓塞栓症が重要な死亡原因になります。
そのため治療は、
免疫抑制
+
輸血などの支持療法
+
血栓予防
を組み合わせて考えます。
第二免疫抑制薬には明確な第一選択がない
ステロイドだけで不十分な場合や、ステロイドの副作用を減らしたい場合には、
アザチオプリン
シクロスポリン
ミコフェノール酸モフェチル
などの第二免疫抑制薬を使用します。
しかし、第二免疫抑制薬を追加することで生存率が改善すること自体、明確には証明されていません。
さらに、
「第二免疫抑制薬ならこれが第一選択」
という明確な勝者もありません。
一方、シクロホスファミドは利益がなく、むしろ予後を悪化させる可能性があるため、使用しないことが強く推奨されています。
輸血はPCVの数字だけで決めない
輸血は、PCV/Hctが何%になったら必ず行う、という考えではありません。
臨床症状、乳酸、貧血の進行速度、犬種ごとの正常PCV、モニタリング可能かどうかなどを総合して判断します。
IMHAでは通常は循環血液量が保たれているため、全血よりpRBC(packed red blood cells:濃厚赤血球)が適しています。
BHSという人工的な酸素運搬製剤もある
BHS(bovine hemoglobin solution:牛ヘモグロビン溶液)という製剤もあります。日本では入手できないのが残念です。
また、一酸化窒素を捕捉して血管収縮や高血圧を起こす可能性などがあり、コンセンサスでは、BHSよりpRBCまたは全血を優先しています。
IMHAでは原則として血栓予防を行う
IMHAでは血栓症が重要な死亡原因になるため、
原則としてすべてのIMHA犬にthromboprophylaxis(血栓予防)を行う
ことが推奨されています。
例外として、血小板数が30,000/µL未満の重度血小板減少症では慎重に判断します。
特に診断後最初の2週間は血栓リスクが高く、抗血栓療法が重要になります。
このガイドラインを読んで印象に残ったこと
IMHAというと、
「ステロイドを高用量で使い、効かなければ免疫抑制薬を追加する病気」
という印象がありました。
しかし、このコンセンサスを読むと、
第二免疫抑制薬を追加する利益そのものが十分証明されていない
一方で、
血栓予防は治療の重要な柱としてかなり強く位置づけられている
ことが印象的でした。
IMHA治療では、免疫抑制薬を増やすことだけでなく、輸血・血栓予防・副作用管理を含めて全体を見ることが重要なのだと思います。
▼ ガイドラインを読む に戻る
