A New Flap Model in the Treatment of Non-Healing Elbow Wounds in Dogs: The Island Arterial Composite Flap Comprising the Skin Originating from the Thoracodorsal Artery, the Cutaneous Trunci Muscle and Fascia of the Latissimus Dorsi Muscle (2016)
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
従来の胸背動脈軸型皮弁の問題点
犬の肘関節周囲は皮膚に余裕がなく、関節運動や接地によって張力がかかるため、皮膚欠損の再建が難しい部位です。
従来の胸背動脈軸型皮弁では、皮弁遠位部の壊死、縫合部の離開、過度な緊張などが問題になります。
そこで著者らは、胸背動脈を栄養血管とする島状皮弁(Island flap)を考案しました。
この皮弁は、皮膚・皮幹筋・広背筋筋膜を一体として採取し、血管茎だけでつながった状態にして肘関節まで移動させる方法です。
なぜ広背筋筋膜を含めるのか
著者らは、筋膜の特徴として次の性質を挙げています。
- 血管新生を受けやすい
- 採取しやすい
- 虚血に比較的強い
- 滑りやすい表面を形成する
- 伸張に抵抗する
特に筋膜の滑走性によって、移植部の縫合線にかかる張力を軽減できる可能性があります。
広背筋そのものは採取せず、筋膜だけを皮弁に含めます。
皮弁の作成方法
まず、肘の皮膚欠損部をデブリードマンし、健康な創縁を形成します。
胸背部では、肩甲棘に沿って頭側の切開線を設定し、それと平行に尾側の切開線を設け、楕円形の皮弁を設計します。
皮膚・皮幹筋・広背筋筋膜を一体として、尾背側から頭腹側へ剥離します。
肩甲骨尾側の陥凹付近で胸背動静脈の血管茎を確認し、損傷しないように周囲組織から慎重に遊離します。
血管茎は約9~10cm確保し、皮膚の連続性を切り離して島状皮弁とします。
その後、腋窩に作成した皮下トンネルに皮弁を通し、肘の皮膚欠損部まで移動させて縫合します。
血管茎は移動時に約90度曲がります。
術後は血管茎の圧迫による血流障害を避けるため、包帯を使用していません。
手術成績
14頭の犬、15か所の肘部創傷にこの方法を実施しました。
皮弁の大きさは8×5cmから13×8cmでした。
皮弁の部分壊死・全壊死は認められず、漿液腫や浮腫も発生しませんでした。
縫合離開は2頭で認められましたが、1頭は追加処置なしで治癒し、もう1頭は再縫合によって治癒しました。
術後20日までの短期成績は良好でした。
従来の胸背動脈軸型皮弁を島状にして移動の自由度を高め、さらに広背筋筋膜を含めるという工夫が興味深い論文です。
この術式は普及していません。マイナーな雑誌なのか、評価されていないのか、慎重に検討したいと思います。
▼ 関連項目
→ 皮膚フラップの設計を考える
▼ 手術や麻酔を受ける方へ
→ はじめての方へ
