猫の自宅皮下点滴|必要になる時期と上手に続けるコツ

慢性腎臓病の猫では、尿を濃くする力が低下し、尿として水分を失いやすくなります。飲水だけで失った水分を補えなくなると脱水し、腎血流量も低下するため、自宅で皮下点滴を行うことがあります。ただし、腎臓病になったら早くから毎日点滴した方がよい、というわけではありません。

皮下点滴の目的は、腎臓を治すことではなく、飲水だけでは不足する水分を補い、脱水を防ぐことです。

執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)

自宅での皮下点滴が必要になるのはいつ?

慢性腎臓病(CKD)になると、腎臓で尿を濃くする力が低下します。そのため、たくさん水を飲んでいても薄い尿として水分が失われ、病気が進むにつれて脱水しやすくなります。

皮下点滴を始める時期は、「クレアチニンが○mg/dLになったら」と一律には決められません。

  • 水を十分飲めているか
  • 食事から水分をとれているか
  • 体重が減っていないか
  • 脱水があるか
  • 食欲や元気が落ちていないか
  • 嘔吐などによる水分喪失がないか

などを合わせて判断します。

IRISでは、ステージ2では脱水したときに必要に応じて補液し、ステージ3になると一部の猫で定期的な補液が必要になるとしています。

つまり、「ステージ3だから点滴」ではなく、「自力で十分な水分を維持できなくなってきたから点滴」と考える方が実際に近いでしょう。

なぜ猫では皮下点滴ができるの?

人でも皮下にゆっくり水分を入れる方法がありますが、若い人では皮下組織が比較的しっかりしているため一般的ではなく、高齢者など皮下組織にゆとりがある場合に行われることがあります。

犬や猫も皮膚の下にゆとりがあるため、皮下にある程度の液体を入れることができます。針を刺す瞬間に嫌がることはありますが、点滴中の痛みは比較的少なく、多くの猫が慣れると落ち着いて受けられます。

毎日点滴した方が腎臓にはよい?

点滴をたくさんすれば、それだけ腎臓がよくなるわけではありません。必要以上の補液は体への負担になります。

「毎日・1日おき・週数回」などの頻度や量は、体重、飲水量、尿量、脱水の程度、腎機能などを見ながら決めます。

静脈点滴では、短時間に大量の水分を入れると循環血液量が急に増え、肺水腫などを起こす危険があります。一方、皮下点滴は皮下に入れた液体がゆっくり血管内へ吸収されるため、点滴バッグから皮下へ入れるスピードそのものは、それほど神経質になる必要はありません。自宅では、猫が嫌がらない範囲である程度速く入れても問題ないことが多いでしょう。

ただし、ゆっくり吸収されるからといって、いくら入れてもよいわけではありません。特に心臓病がある猫では、吸収された水分が循環器への負担になることがあるため、補液量と頻度について獣医師と相談する必要があります。

自宅皮下点滴を上手に続けるコツ

大切なのは、猫にも飼い主さんにも無理なく続けられる方法を見つけることです。

猫が落ち着く場所や時間を決め、おやつやフードを食べている間に行うなど、その猫に合った方法を探します。毎回まったく同じ場所に刺す必要はなく、病院で教えてもらった範囲で少しずつ位置を変えてもよいでしょう。

どうしても嫌がる日は、無理に押さえつけるより、量や回数、方法を動物病院に相談する方が長く続けられることもあります。

また、前回の液体が長時間残っている、呼吸が速い・苦しそう、急に元気がなくなったなどの変化がある場合は、次の点滴をする前に動物病院へ相談してください。

自宅での皮下点滴は、慢性腎臓病の猫にとって非常に役に立ちます。

ただし、「腎臓病だから点滴する」のではなく、「その猫が自分で維持できなくなった水分を補う治療」です。必要な量や頻度は猫によって違うため、状態に合わせて調整していきます。

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