猫の膵炎は、思っていた以上に「診断が難しい病気」だと感じました。
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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
猫の膵炎は、組織学的にはかなり多い
剖検した猫では、組織学的に膵炎がかなり高頻度にみつかります。ところが、一見健康だった猫にも膵炎の所見が認められています。
つまり、「病理で膵炎がある」ことと「臨床的に膵炎で具合が悪い」ことは必ずしも一致しません。
急性と慢性は、症状ではなく基本的には病理学的な分類
急性膵炎は、原因がなくなれば可逆的な炎症です。一方、慢性膵炎では線維化などの不可逆的な変化が残ります。
この違いは基本的には病理学的なもので、臨床症状だけから急性膵炎と慢性膵炎の急性増悪を区別することは難しいとされています。
猫では「吐く」より「食べない、元気がない」
猫の膵炎では、犬のように嘔吐や明らかな腹痛が前面に出るとは限りません。
むしろ、食べない、元気がないという非特異的な症状が中心です。腹痛も少ないのではなく、猫では見逃されている可能性があると考えられています。
超音波検査だけでは診断できない
超音波検査は重要ですが、正常膵と膵炎、急性膵炎と慢性膵炎、結節性過形成と腫瘍を完全に区別できるわけではありません。
特に慢性膵炎では、超音波所見が正常でも否定できません。
Spec fPLも単独では決め手にならない
Spec fPLは猫の膵炎診断に有用ですが、重症例ほど感度が高く、軽症例では見逃すことがあります。
Spec fPL陽性 → 膵炎をかなり疑う
Spec fPL陰性 → 特に軽症・慢性膵炎は残る
という使い方が分かりやすそうです。
結局、症状、血液検査、Spec fPL、超音波などを組み合わせて診断する病気です。
「膵炎だから絶食」はしない
急性膵炎では、早期経腸栄養そのものが治療と考えます。
食べない状態を続けると、腸管バリア機能の低下や腸内細菌叢の変化が起こり、猫では肝リピドーシスの危険もあります。そのため、経口摂取または経腸栄養を早期に開始します。
食べなければfeeding tubeを考える
食欲刺激薬を使用しても48時間ほど食べない場合や、来院前から長期間食欲不振が続いている猫ではfeeding tubeを検討します。
急性膵炎の猫でよく使われるのは、
nasoesophageal tube(経鼻食道チューブ)
esophagostomy tube(食道瘻チューブ)
です。
短期間なら全身麻酔が不要な経鼻食道チューブ、長期になりそうなら食道瘻チューブ、という使い分けがしやすそうです。
痛みは積極的に治療する
猫では膵炎の腹痛が過小評価されている可能性があります。
急性膵炎ではオピオイドが第一選択で、多くの猫ではブプレノルフィンが使用できます。
慢性膵炎でも、症状が明らかな時期には経粘膜ブプレノルフィンを使用できます。
長期管理では、ガバペンチンやトラマドールが選択肢になります。
猫の膵炎は「一つの検査で診断して、一つの薬で治す病気」ではない
このコンセンサスを読んで一番印象に残ったのは、猫の膵炎では何か一つの検査に頼るのではなく、症状、血液検査、画像診断を組み合わせて判断する必要があることです。
そして治療も、膵炎そのものを叩く薬というより、輸液、鎮痛、制吐、早期経腸栄養を丁寧に行うことが中心です。
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