犬猫のエコー検査で毛を刈るのはなぜ?絶食と鎮静が必要な理由

犬や猫の超音波検査、いわゆるエコー検査は、放射線を使わずに体内の臓器をリアルタイムで観察できる検査です。肝臓、胆嚢、腎臓、膵臓、消化管、膀胱、心臓などを調べられ、検査そのものによる痛みもほとんどありません。

一方、超音波には空気を通りにくいという特徴があります。そのため、検査前の毛刈りや絶食は、単なる慣例ではなく、診断に必要な画像を得るための準備です。ただし、すべての犬猫に同じ準備が必要なわけではありません。検査する部位、緊急性、年齢、病気、性格によって調整します。

腫瘍トップ 検査 > 本記事

執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)

エコー検査で毛を刈る理由

超音波検査では、プローブから音波を送り、臓器から返ってきた反射を画像にしています。皮膚とプローブの間に空気が入ると、音波の多くが体表で反射し、体の奥まで届きにくくなります。

犬猫の被毛は、毛と毛の間に空気を含んでいます。毛を残したままでは皮膚とプローブを十分に密着させられず、画像が暗くなったり、細かな病変が見えにくくなったりします。毛を短く刈り、エコーゼリーで皮膚との隙間を埋めることで、音波が体内へ伝わりやすくなります。

腹部全体を詳しく調べる場合には、みぞおち付近から下腹部まで広めに毛を刈ることがあります。心臓の検査では、胸の一部だけを刈るのが一般的です。毛の薄い犬猫や救急時の簡易検査では、毛を分けてアルコールやゼリーをなじませ、毛刈りを省略する場合もあります。

腹部エコー前に絶食する理由

腹部超音波検査では、一般に検査前8時間程度の絶食が勧められます。食事が胃や腸に残っていると、食物や消化に伴うガスが音波を遮り、膵臓、副腎、リンパ節などが見えにくくなるためです。腹部超音波検査の標準化に関する専門家の合意文書でも、胃内容物による影響を減らすため、少なくとも8時間の絶食が推奨されています。

また、食後には胆嚢が収縮します。胆嚢が小さくしぼんでいると、胆嚢壁、胆泥、胆石、胆嚢粘液嚢腫などを評価しにくくなります。絶食は、胆嚢を観察しやすい状態にする意味もあります。犬を対象とした研究でも、絶食によって一部の腹部臓器が観察しやすくなることが示されています。

ただし、絶食すれば腸内ガスが完全になくなるわけではありません。また、食べてしまったから検査がまったくできないとも限りません。食事をした場合は自己判断で予約を取り消さず、病院へ伝えてください。

水まで止める必要はあるのか

通常の腹部エコーだけであれば、水は飲ませてよいことが多く、自己判断で長時間の絶水を行う必要はありません。一方、鎮静や麻酔、内視鏡検査などを予定している場合には、飲水を止める時間が別に指定されることがあります。

子犬や子猫、糖尿病、低血糖を起こしやすい病気、重い肝疾患がある犬猫では、長時間の絶食が負担になる場合があります。絶食と絶水の時間は一律ではないため、病院から指示された方法を優先します。麻酔前の絶食時間も、健康状態や年齢、処置内容に応じて個別に設定されます。

膀胱は尿がたまっている方が見やすい

胃腸は空の方が見やすい一方、膀胱はある程度尿がたまっている方が観察しやすくなります。尿が音波を通す窓となり、膀胱壁、結石、腫瘤、前立腺、子宮などを確認しやすくなるためです。

排尿直後の膀胱は小さく縮み、正常でも壁が厚く見えることがあります。膀胱を詳しく調べる予定がある場合には、来院直前の散歩を控えるよう指示されることがあります。ただし、苦しそうになるまで排尿を我慢させる必要はありません。

エコー検査に鎮静は必要か

観察だけの超音波検査では、多くの犬猫が無麻酔、無鎮静で受けられます。横向きや仰向けが苦手な場合には、立った姿勢や伏せた姿勢で調べられることもあります。

しかし、強い恐怖や痛みがある、保定によって呼吸や循環に負担がかかる、長時間動かずにいることが難しい場合には、軽い鎮静を使う方が安全なことがあります。鎮静は人の都合で動きを止めるだけでなく、犬猫の恐怖や無理な保定を減らすためにも行います。

細胞診や組織検査では鎮静を検討する

超音波で臓器を見るだけでなく、肝臓、脾臓、腎臓、リンパ節、腹腔内腫瘤などに針を刺す場合には、動いて針先がずれないことが重要です。ただし、超音波ガイド下の細針吸引が、すべて全身麻酔になるわけではありません。

病変の場所、針の太さ、出血リスク、犬猫の性格によって、無鎮静、軽い鎮静、深い鎮静、全身麻酔を使い分けます。太い針で組織を採取するコア生検や、呼吸によって大きく動く病変への穿刺では、より確実な不動化が必要です。実施前には血小板数や血液凝固、病変周囲の血管を確認し、出血などの合併症を減らします。

検査の準備は犬猫ごとに変わる

毛刈り、絶食、鎮静にはそれぞれ理由がありますが、どれも一律に行うものではありません。呼吸が苦しい救急患者では、毛刈りや絶食を待たずに短時間の超音波検査を行います。反対に、数ミリの病変まで詳しく調べる場合には、毛刈りと絶食を行い、落ち着いた状態で時間をかけて観察します。

高齢だから鎮静できない、若いから安全という単純な判断でもありません。準備の目的は、きれいな画像を撮ることだけではなく、できるだけ少ない負担で、診断に必要な情報を確実に得ることです。

▼ 関連記事
超音波検査、リアルタイムで臓器を見る
細胞診FNAは逮捕かリリースを決める検査
▼ もう少し考えたい
治療を迷っている方へ
▼ 相談してみたい
腫瘍診療について
はじめての方へ

友だち追加 友だち追加 Instagram Instagram スタッフ紹介 スタッフ紹介
上部へスクロール