犬が下痢をして、さらに血まで混じっていると、「細菌感染では?」「抗生剤が必要なのでは?」と心配になるかもしれません。しかし、血便があることと、抗菌薬が必要であることは同じではありません。
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
血便だけでは抗菌薬の適応は決まらない
鮮やかな赤い血は、大腸の粘膜に炎症が起こったときにも見られます。感染症だけでなく、急な食事変更、食べ慣れないもの、ストレスなどによる大腸炎でも血が混じることがあります。
そのため、血便だけを見て細菌感染と判断することはできません。
2024年に公表された犬の急性下痢に対するENOVATガイドラインでは、血便の有無にかかわらず、全身状態が良好な軽症例には抗菌薬を使用しないことを推奨しています。
脱水や循環血液量の低下があっても、適切な輸液によって全身症状が改善する中等症では、原則として抗菌薬は推奨されません。判断の中心になるのは、元気、脱水、循環状態、全身性炎症の程度、輸液への反応です。
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抗菌薬が必要になる場合もある
一方、十分な輸液を行っても全身状態が悪い、循環不全が続く、著しい炎症反応があるなど、重症例では抗菌薬が必要になる場合があります。腸粘膜のバリアが大きく壊れ、細菌が血液中へ入り込む菌血症や敗血症が疑われるためです。
抗菌薬は「便を止める薬」ではなく、細菌感染による全身への影響を治療するための薬です。必要のない症例で使用すると、薬剤耐性菌の選択や腸内細菌叢の乱れにつながる可能性があります。
少量の鮮血だけで直ちに重症とは限りませんが、大量の血便、黒い便、繰り返す嘔吐、元気消失、腹痛などがあれば早めに受診してください。
「血便だから抗菌薬」と決めるのではなく、犬全体の状態を診て必要性を判断することが大切です。次の記事では、整腸剤や下痢止めの役割を整理します。
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