犬の腎臓腫瘍|血尿、腎臓のしこり、腎機能低下に注意したい病気

腎臓は、血液をろ過して尿を作る臓器です。老廃物の排泄、水分や電解質の調整、血圧の調整、造血に関わるホルモンの分泌など、体を維持するうえで重要な働きをしています。

犬の腎臓にできる腫瘍は、発生頻度としては多くありません。しかし、腎臓そのものから発生する原発性腎腫瘍では、腎細胞癌、腎芽腫、肉腫、リンパ腫などが問題になります。

特に腎細胞癌は、犬の原発性腎腫瘍で代表的な悪性腫瘍です。腎臓の中で大きくなるだけでなく、肺やリンパ節、肝臓、骨などへ転移することがあります。

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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)

初期には症状が出にくい

腎臓はお腹の奥にあるため、小さな腫瘍では外から分かりません。また、片方の腎臓に病気があっても、もう片方の腎臓が働きを補うため、初期には元気に見えることがあります。

そのため、健康診断の腹部エコー検査で偶然見つかることがあります。反対に、症状が出た時点では、腫瘍が大きくなっていたり、すでに転移があることもあります。

犬の腎臓腫瘍で見られる症状には、血尿、食欲低下、体重減少、元気消失、嘔吐、お腹の張り、腹部のしこり、痛み、多飲多尿などがあります。

血尿が続くときは注意が必要です

腎臓腫瘍では、血尿が見られることがあります。

腫瘍の中にできる血管はもろく、出血しやすい性質があります。また、腫瘍が腎盂や尿管など、尿の通り道に広がると、尿の中に血液が混じることがあります。

犬の血尿では、膀胱炎、尿石症、前立腺疾患、膀胱腫瘍などもよく見られます。そのため、血尿があるからすぐ腎臓腫瘍というわけではありません。

ただし、中高齢の犬で血尿を繰り返す、抗菌薬で一時的によくなっても再発する、尿検査だけでは原因がはっきりしない場合は、膀胱だけでなく腎臓や尿管まで確認します。

腎臓のしこりと水腎症

腎臓腫瘍が大きくなると、腹部エコー検査で腎臓の形が崩れて見えたり、しこりとして確認されたりします。大型の腫瘍では、お腹を触ったときに腫瘤として分かることもあります。

また、腫瘍が尿管をふさいだ場合、腎臓で作られた尿が流れにくくなり、水腎症を起こすことがあります。水腎症では腎臓の内部が拡張し、痛み、嘔吐、食欲低下、腎機能の悪化につながることがあります。

片側だけの病変であっても、反対側の腎臓に慢性腎臓病がある場合は、全身状態が急に悪化することがあります。

検査で何を確認するか

腎臓腫瘍が疑われる場合、血液検査、尿検査、腹部エコー検査を行います。

血液検査では、BUN、クレアチニン、SDMA、リン、電解質、貧血や炎症の有無を確認します。腎臓の数値が正常でも、片側の腎臓に腫瘍があることはあります。反対側の腎臓が補っているためです。

腹部エコー検査では、腎臓の大きさ、形、内部構造、腫瘤の有無、水腎症、尿管や膀胱の異常を確認します。腫瘍が疑われる場合は、CT検査が重要です。CTでは、腫瘍の広がり、血管への浸潤、リンパ節転移、肺転移の有無を詳しく評価できます。

腎臓は血流が多い臓器です。腫瘍に針を刺して細胞を取る検査は、出血や播種のリスクを考えて慎重に判断します。片側に限局した腫瘍で手術が可能と考えられる場合は、摘出後の病理検査で確定診断を行うことがあります。

治療は反対側の腎臓が鍵です

腫瘍が片側の腎臓に限局し、明らかな転移がなく、反対側の腎臓が十分に働いている場合は、腎臓と尿管を摘出する手術が治療の中心になります。

この手術では、「腫瘍を取れるか」だけではなく、手術後は片方の腎臓だけで生きていくことになるため、反対側の腎臓の機能評価がとても重要です。

すでに肺転移や大きな血管への浸潤がある場合、重度の腎機能低下がある場合は、手術が適さないこともあります。その場合は、痛み、吐き気、食欲低下、血尿、腎不全の管理を中心に考えます。

抗がん剤や分子標的薬、放射線治療は、腫瘍の種類や進行度によって検討されることがあります。ただし、腎臓腫瘍では薬だけで治すことは難しく、生活の質を保つ目的で行うことも多くあります。

緩和ケアも大切な治療です

腎臓腫瘍が進行している場合でも、できることはあります。

吐き気を減らす。
食欲を支える。
脱水を補正する。
痛みを和らげる。
血尿や貧血を管理する。
腎不全によるだるさを軽くする。

根治が難しい場合でも、犬が家で穏やかに過ごせる時間を作ることはできます。

まとめ

犬の腎臓腫瘍は、初期には症状が出にくく、健康診断で偶然見つかることがあります。

血尿、食欲低下、体重減少、腹部のしこり、嘔吐、多飲多尿などがある場合は、膀胱だけでなく腎臓も確認します。

治療は、腫瘍が片側に限局しているか、転移がないか、反対側の腎臓が十分に働いているかで大きく変わります。手術で長期生存を目指せる場合もあれば、内科治療や緩和ケアを中心にした方がよい場合もあります。

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