犬の下腿部、特に膝関節から足根関節までの皮膚欠損は、周囲の皮膚に余裕がないため、閉鎖が難しい部位です。
通常の回転皮弁や進展皮弁では、皮膚を十分に移動できないことがあります。
そこで選択肢となるのが、膝動脈軸型皮弁です。
この皮弁は、伏在動脈の膝関節枝と内側伏在静脈の分枝を利用します。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31118000
皮弁の適応範囲
従来の報告では、脛骨の近位2/3までの皮膚欠損を覆うことができるとされています。
今回の2症例では、さらに遠位の足根関節付近まで皮弁を移動させています。
皮弁の設計
基部の位置を決める解剖学的指標は次の2つです。
- 膝蓋骨の近位1 cm
- 脛骨粗面の遠位1.5 cm
皮弁は膝関節外側に設計し、基部を先端より2 cm広くします。
皮弁を剥離した後、遠位方向へ回転させて欠損部を覆います。
皮弁の長さ
膝動脈は比較的細い血管であるため、皮弁はできるだけ短く設計することが推奨されています。
過去の実験では平均皮弁生着率89%、部分壊死の範囲は10~33%と報告されています。
今回の2症例でも皮弁先端に小さな創離開が生じましたが、追加手術を必要とせずに管理できました。
皮弁の長さだけでなく、縫合部の張力や骨突出部による圧迫にも注意が必要です。
膝動脈軸型皮弁は、通常の局所皮弁では閉鎖が難しい下腿遠位部の皮膚欠損に対する有用な選択肢と考えられます。
