病理検査結果の読み方:専門用語を分かりやすく解説

腫瘍トップ > 検査 > 病理検査結果の読み方

執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)

愛犬や愛猫の「病理検査結果報告書」を受け取ったとき、ずらりと並ぶ専門用語に戸惑われることでしょう。「結局、がんなの?」「治るの?」という不安を解消するために、報告書を読む上で押さえておきたい5つの重要ポイントを解説します。

しこりについて全体像を知りたい方は【腫瘍トップ】をご覧ください。

1. 「良性」か「悪性(がん)」か

まず最初に確認すべき、最も重要な項目です。

良性: その場所でゆっくり大きくなるだけで、他の場所に転移することはありません。手術で取り切れば完治が望めます。
悪性: いわゆる「がん」です。周囲に根を張ったり(浸潤)、リンパ節や肺などに転移したりする可能性があります。

診断がついた後は、「どの治療を選ぶか」がとても大切になります。
→【手術・抗がん剤・放射線治療の違いと選び方

2. 核の異型性と大小不同:細胞の「不気味さ」

獣医師が顕微鏡で最も注目するのが、細胞の中心にある「核(遺伝子の入れ物)」の形です。

核の大小不同: 本来、健康な細胞は同じ大きさで整然と並んでいますが、がん細胞はコピーミスを繰り返すため、核の大きさがバラバラになります。
不気味な顔つき: 核の形が歪んでいたり、異常に大きかったりすることを「異型性が強い」と表現します。
なぜ重要か: 例えるなら「犯人の顔つきがどれほど不気味で、常軌を逸しているか」です。核がバラバラで乱れているほど、ルールを無視して暴走するエネルギーが強く、手強い相手だと判断されます。

3. 「グレード」と「ステージ」の違い

ここを混同されている方が非常に多いのですが、意味は全く異なります。

• グレード(悪性度):細胞の「凶悪度」

前述した「核の形」や「増殖スピード」から、がんそのものの性質がどれくらい凶悪かを示します。病理医が判断します。

• ステージ(病期):体の中での「広がり」

がんが体の中でどこまで広がっているかを示します。例えるなら「犯人がどこまで逃げたか」です。「顔つきはおとなしい(低グレード)けれど、発見が遅れて遠くまで逃げている(高ステージ)」というケースもあります。私たち臨床獣医師が判断します。

4. 核分裂指数(Mitotic Index):増殖の「勢い」

顕微鏡で見える範囲の中に、どれくらいの細胞が「分裂(増殖)の真っ最中」だったかを示す数値です。

数値が高い: がん細胞が猛スピードで増えており、進行が速いことを意味します。
数値が低い: 比較的ゆっくり進行するタイプであることを示唆します。

5. マージン(Margin):切り口の「余裕」

手術で摘出した組織の切り口(端っこ)に、がん細胞が残っていないかを確認する項目です。

マージン陰性(マイナス、クリア、クリーン): 切り口にがん細胞は見られません。しっかり取り切れた可能性が高い状態です。
マージン陽性(プラス、ダーティ): 切り口にがん細胞が露出しています。目に見えないレベルで体にがんが残っている可能性があり、追加の治療を検討する材料になります。

獣医師からのメッセージ

病理報告書はあくまで「組織の断片」から得られた情報です。数値や結果だけで絶望する必要はありません。大切なのは、その結果を受けて「次にどのような手を打つか」を総合的に判断することです。やれる範囲のことを決めていく作業が求められます。

難しい言葉で書かれた報告書を一緒に読み解き、その子にとって最善の治療プランを一緒に考えていきましょう。

どうするか迷われている場合は、診療の流れや考え方をまとめています。
→【はじめての方へ(診療の流れとご案内)】をご覧ください

▼ しこりの正体を調べる検査について
→【しこり・腫瘍の検査方法のまとめ

▼ 検査結果が治療にどう関わるか
→【腫瘍の治療方法のまとめ

▼ お知らせを受け取りたい方へ
 → 【公式LINE】開院のお知らせを受け取る


友だち追加
お問い合わせ web予約 LINE登録 LINE登録
上部へスクロール