IRIS guidelines 2026を読んで

腎臓病の治療について、この30年の進歩がよく分かりました。

意識のある犬猫で血圧を測るなんて、学生の頃は思ってもみませんでした。当時の私にとって、血圧は「麻酔中に測るもの」という認識でしたから。

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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)

Staging of Chronic Kidney Disease based on blood creatinine and SDMA concentrations

まず出てくるのがSDMA

獣医療で一般的に使われるようになったのは、ここ10年ほどの検査です。クレアチニンと違って筋肉量の影響を比較的受けにくく、GFR(糸球体濾過量)が低下すると早い段階から上昇しやすいため、CKDの評価に導入されています。

クレアチニンは筋肉量にも影響されます。ヒトでも一般に筋肉量の多い人ほど高くなりやすい。そこでヒトではクレアチニンに年齢や性別などを組み合わせてeGFR(推算糸球体濾過量)を計算します。

犬猫ではヒトのようなeGFRが日常診療に定着していないので、SDMAの存在意義が大きいのでしょう。

そして、CKDのステージを決めた後に、

タンパク尿と血圧は別カテゴリーで評価する。

これも印象的でした。

CKDのステージは、脱水していない安定した状態で、クレアチニンやSDMAを複数回測定して決めます。その後、蛋白尿と血圧でさらにサブステージ分類します。

また、治療後にクレアチニン、SDMA、UP/C、血圧が変われば、その時点の状態に合わせて分類を更新していきます。

Treatment Recommendation for CKD In Dogs(2026)

まず血圧。

高血圧があれば血圧を下げる。

「犬の降圧薬って何だっけ?」と思って読んでみると、ACE阻害薬。

学生の頃、同級生が卒論でACE阻害薬を研究していたのを思い出しました。私は長い間「ACEI=心臓の薬」というイメージで見ていましたが、もともとはRAASを抑制し、血圧や糸球体内圧にも作用する薬です。

心臓だけの薬ではなかった。当然なのですが、改めて読むと新鮮です。

犬の高血圧では、IRISはACE阻害薬から始め、必要に応じてアムロジピンやARBなどを組み合わせる方法を示しています。

次いでタンパク尿

こちらも単に「尿にタンパクが出ている」で終わりではなく、糸球体内圧を下げ、尿中へのタンパク漏出を減らすことが治療になります。

2026年版では、犬の持続性蛋白尿ではARBと腎臓食が推奨され、十分に抑えられない場合にはACE阻害薬との併用も慎重に検討されています。

猫については今回は割愛。

Grading of Acute Kidney Injury(2026)

慢性腎臓病では、「安定した状態で複数回測定してステージを決める」と繰り返し書かれていました。

AKIのガイドラインを読んで、その理由がよく分かりました。

CKDは安定した慢性病変をStageで表す。
AKI
は刻々と変化する急性病変をGradeで表す。

AKIのGradeは「一度決めたら終わり」ではありません。その時点のクレアチニン、尿量などからGradeを決め、悪化すれば上がり、回復すれば下がります。CKDへ移行することもあります。

さらに、AKIではクレアチニンがまだ正常範囲でも、48時間以内に0.3 mg/dL以上上昇すればGrade Iになり得ます。

「腎不全になってから気づくのではなく、その前の腎障害を見つける」

これがAKIという概念の大きな意味なのでしょう。

昔、腹膜透析で急性腎不全を乗り切った症例を見たことがあります。

当時、研修医の先生が「それでも発見が遅い」と悔しそうに話していたのを覚えています。

今になってAKIのガイドラインを読むと、その言葉の意味が少し分かる気がします。

腎不全になってから治療するのではなく、まだクレアチニンが大きく上がっていない段階から腎障害を見つける。

30年前に見た症例と、今読んでいるガイドラインがつながりました。

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