この論文は、動物病院に到着する前に、飼い主や周囲の人が行うべき応急処置をまとめたガイドラインです。
実用的なのは、次の2つの使い方です。
糖尿病などのリスクがある患者に、緊急時の対応を事前に指導すること。
熱中症、誤食、窒息などが起きた際に、電話で具体的な行動を指示すること。
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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
最初に動物の状態を4つに分類する
応急処置のアルゴリズムでは、最初に動物の状態を次の4つに分類しています。
・反応が悪い
・突然の痛みがある
・大量出血している
・パニック、呼吸困難、落ち着きがない
それぞれの状態に応じて、必要な応急処置を判断します。
反応が悪い場合は、呼吸を確認する
最初に声をかけ、刺激に反応するかを確認します。
反応がなければ呼吸を確認し、呼吸がなければCPRを開始します。
呼吸がある場合には、低血糖、アレルゲンへの曝露、オピオイド中毒などを考えます。
低血糖では、糖液を飲ませずに頬粘膜へ塗布する
症状のある低血糖では、コーンシロップ、蜂蜜などを使用します。
重要なのは、糖液を無理に飲み込ませることではなく、比較的広い範囲の頬粘膜に塗布することです。
投与量は体格に応じて0.2~10mLが提案されています。
熱傷は20分、化学熱傷は15分以上洗浄する
突然の痛みがある場合には、熱傷や化学物質への曝露を考えます。
通常の熱傷では、受傷後3時間以内に、冷たい流水で20分以上冷却します。
化学熱傷では、処置者が防護具を着用し、安全に除去できる化学物質を取り除いてから、流水で15分以上洗浄します。
大量出血では直接圧迫を優先する
大量出血では、最初に出血部位を直接圧迫します。
四肢や尾からの重度出血が直接圧迫だけでは止まらない場合には、止血帯の使用を検討します。
止血帯は出血部位より近位に装着し、幅5cm以上の布などを使用することが提案されています。
意識のある犬猫では、疼痛による咬傷の危険性があるため行えません。
熱中症では病院到着前に冷却を開始する
熱中症が疑われる場合には、直ちに運動を中止し、涼しい環境へ移動します。
そして、その場で積極的な冷却を開始します。
冷却には流水を使用し、特に被毛が薄い腹側を中心に、皮膚まで十分に濡らします。
足先だけの冷却は推奨されていません。
直腸温が39.7~40℃になったら、原則として積極的な冷却を終了します。
ただし、上気道閉塞がある場合には、パンティングが明らかに改善するか、38.6℃に達するまで冷却を続けることが提案されています。
体温が測定できない場合には、現場で15分間冷却してから搬送します。
窒息では最初に背部を最大5回叩く
気道異物による窒息が疑われ、意識がある場合には、まず背部叩打を行います。
叩く位置は胸郭の尾背側、脊椎の外側です。背骨を直接叩かないようにします。
最大5回の背部叩打で改善しなければ、腹部圧迫や胸部圧迫などの別の方法を試し、背部叩打と交互に繰り返します。
意識のある犬猫の口に手を入れて異物を取り出そうとしてはいけません。
意識を失った場合には、胸骨圧迫30回からCPRを開始します。
CPRでは胸骨圧迫を優先する
無反応で正常な呼吸が認められない場合には、10秒以内にCPRを開始します。
救助者が1人の場合、胸骨圧迫30回と人工呼吸2回を繰り返します。
胸骨圧迫は100~120回/分、人工呼吸2回は5秒以内に行います。
人工呼吸に危険がある場合には、胸骨圧迫のみのCPRを行います。
携帯電話はスピーカーモードにする
緊急時に救助を要請する場合には、携帯電話をスピーカーモードにします。
通話しながら両手を使えるため、応急処置を中断せずに指示を受けることができます。
飼い主が動物病院へ電話してきた際にも、実用的な方法です。
応急処置では、処置者の安全を優先する
疼痛や恐怖によって、普段はおとなしい犬猫でも攻撃的になる可能性があります。
応急処置を行う人に危険が及ぶ可能性が高い場合には、無理に処置しないことを推奨しています。
また、応急処置によって症状が改善しても、必要な動物病院での診察や治療を遅らせてはいけません。
このガイドラインは、飼い主への事前教育だけでなく、緊急時の電話対応を標準化するためにも役立つ内容だと思います。
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