Rhomboid flap reconstruction of a chronic wound in a dog; an alternative subdermal plexus flap configuration (2025)を読んで

https://bvajournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/vrc2.70029

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症例の概要

7歳、去勢雄のコッカー・スパニエル。大腿尾外側の慢性創傷に対して、菱形皮弁(Rhomboid flap)を用いて再建した症例報告です。

皮下肥満細胞腫の切除後、創部に過度な張力がかかり、術後3日で部分離開、6日で完全離開しました。

その後、約1か月間の創傷管理を行いましたが、閉鎖には至らず、12×6cmの慢性創が残りました。

菱形皮弁を選択した理由

著者は、Reconstructive ladder(再建の梯子)という考え方に基づいて術式を検討しています。

これは、直接縫合などの単純な方法から検討し、必要に応じて局所皮弁、軸性皮弁などの複雑な再建法を選択する考え方です。

今回の症例では、欠損の頭背側に十分な可動性を持つ皮膚がありました。

そこで、軸性皮弁を使う必要はないと判断し、菱形皮弁を選択しています。

創縁をデブリードマンした後、頭背側の皮膚に標準的な菱形皮弁を設計して転移しました。

術後は順調に治癒し、皮弁は完全に生着しています。

著者は、回転皮弁よりも小さな皮弁で再建でき、短く幅広い基部を確保できることを、菱形皮弁の利点として挙げています。

皮膚と筋膜の関係

大腿尾外側の皮膚は、下層にある大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋の筋膜と密接に結合しています。

このような部位では、剥離時に真皮下血管網を損傷する危険があります。

そのため、皮膚が筋肉と強く結合している場合には、筋肉表面の筋膜も皮弁に含めて挙上することが推奨されています。

これは乳腺腫瘍手術でも経験することです。特に胸部乳腺では、浅胸筋の筋膜との結合が強く、剥離に注意が必要です。

皮弁では血流を温存することが重要なので、剥離する層を意識する必要があります。

皮弁の合併症について

著者は、真皮下血管網皮弁の合併症率が51~53.6%と比較的高いことを紹介しています。

主な合併症は創離開や部分壊死などですが、合併症があっても最終的には良好に治癒する症例が多いようです。

また、皮膚ステープラーの使用と合併症増加との関連についても紹介しています。ただし、ステープラーが直接の原因であるとは証明されていません。

ドレーンについては、死腔や漿液腫のリスクに応じて判断する必要があります。腫瘍症例では、ドレーン経路への腫瘍細胞播種や、再切除時の切除範囲についても考慮しなければなりません。

腫瘍切除後の再建は初回手術が重要

今回の症例では、初回手術で直接縫合を行い、張力を緩和するために多数の減張切開を追加していました。

しかし、結果的に創離開を生じています。

減張切開は、腫瘍の切除が不完全だった場合に、再切除する範囲を広げてしまう可能性があります。

つまり、初回の腫瘍切除時から再建方法を計画しておくことが重要です。

考察で気になったこと

獣医領域では菱形皮弁の症例報告が少なく、今回の論文はその有用性を示す貴重な報告です。

一方、査読する立場なら、いくつか気になるところがあります。

まず、考察の第2段落に次の記載があります。

To maximise perfusion, the surgeon should keep the base slightly wider than the flap body.

血流を最大限確保するため、皮弁の基部を本体より少し広くするべきだという説明です。

ランダムパターン皮弁では、古典的に長さと幅の比を2:1以下とする目安があります。ただし、これは基部と皮弁本体の幅の比とは異なります。

基部を広くすることは理解できますが、なぜ本体より広くする必要があるのか、その根拠をもう少し説明してほしいところです。

また、菱形皮弁ではDog-earが少ないと述べていますが、これについては十分な比較データがありません。著者自身も推測として説明しています。

瘢痕による皮膚の伸展性低下についても考察していますが、今回の症例では局所的な瘢痕しかなく、十分な皮膚の可動性が確認されていました。重要な問題にはならなかったようです。

菱形皮弁を4方向から設計できるという説明も、基本的な幾何学の話なので、もう少し簡潔でよいと思います。

読後の感想

この症例で最も参考になったのは、12×6cmという大きな欠損でも、周囲に余裕のある皮膚があれば、局所の菱形皮弁で再建できるという点です。

軸性皮弁は血流の点で有利ですが、必ずしも最初から選ぶ必要はありません。

局所皮弁で十分に閉鎖できるなら、余分な剥離や正常組織の犠牲を避けられます。

また、1987年の改良菱形皮弁では、円形欠損を菱形に切り直す必要がなく、欠損より小さな皮弁を利用できます。

今回の症例でも、改良菱形皮弁ならさらに小さい皮弁で対応できた可能性があります。ただし、その分だけ周囲皮膚に張力を負担させるため、必ずしも有利とは限りません。

菱形皮弁が他の皮弁より優れていると証明した論文ではありませんが、皮膚の余裕がある方向を探し、必要最小限の皮弁で再建するという考え方は、とても参考になりました。

犬の再建外科では、まだ十分に検討されていない部分が多いように感じます。

興味深い症例報告でした。

▼ 関連項目
→ 皮膚フラップの設計を考える
▼ 手術や麻酔を受ける方へ
→ はじめての方へ

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