猫の肝臓腫瘍|食欲不振、黄疸、脂肪肝に注意したい病気

猫の肝臓腫瘍には、肝臓そのものから発生する「原発性肝臓腫瘍」と、ほかの臓器のがんが肝臓へ広がる「転移性肝臓腫瘍」があります。

猫では、胆管や肝細胞など、肝臓の中の組織から発生する腫瘍が問題になることがあります。良性の胆管腺腫や胆管嚢胞腺腫、悪性の胆管癌、肝細胞癌、リンパ腫などが代表的です。

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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)

肝臓は症状が出にくい臓器です

肝臓は、代謝、解毒、胆汁の産生、栄養の貯蔵などを担う重要な臓器です。予備能力が大きいため、腫瘍があっても初期には目立った症状が出ないことがあります。

そのため、猫の肝臓腫瘍は、健康診断の血液検査で肝酵素の上昇が見つかったり、腹部エコー検査で偶然しこりが見つかったりして発見されることがあります。

一方で、食欲低下、体重減少、元気消失、嘔吐、下痢、お腹の張り、黄疸などが出ている場合は、すでに病気が進んでいることもあります。

猫では「食べない」が危険です

猫の肝臓腫瘍で特に注意したいのは、腫瘍そのものだけではありません。食欲不振をきっかけに、肝リピドーシス、いわゆる脂肪肝を併発することがあります。

猫は数日食べない状態が続くと、体の脂肪が急激に分解され、肝臓へ運ばれます。肝臓がその脂肪を処理しきれなくなると、肝細胞の中に脂肪がたまり、肝機能がさらに低下します。

肝機能が落ちると、吐き気が強くなり、ますます食べられなくなります。すると脂肪肝がさらに悪化し、黄疸、脱水、肝不全へ進むことがあります。

つまり、猫では「腫瘍があるから食べない」だけでなく、「食べないことで肝臓がさらに悪くなる」という悪循環が起こります。特に太り気味の猫では注意が必要です。

黄疸が出たときは早めの受診を

黄疸とは、白目、歯ぐき、耳の内側、皮膚などが黄色く見える状態です。尿が濃い黄色からオレンジ色になることもあります。

肝臓腫瘍で黄疸が出る理由には、肝細胞そのものの障害、胆管の圧迫や閉塞、肝リピドーシスの併発などがあります。黄疸がある猫は、吐き気やだるさが強く、食べられないことも多いため、早めの治療が必要です。

検査で何を確認するか

肝臓腫瘍が疑われる場合、まず血液検査で肝酵素、ビリルビン、アルブミン、血糖、凝固異常の有無などを確認します。

猫では、肝酵素の半減期が犬より短いため、ALTやALPの上昇がある場合、現在進行形の肝障害や胆汁うっ滞を反映していることがあります。数値の高さだけでなく、猫の状態や画像所見と合わせて判断します。

腹部エコー検査では、肝臓のしこりの有無、大きさ、場所、単発か多発か、胆のうや胆管の異常、腹水の有無を確認します。手術を検討する場合や、腫瘍の広がりを詳しく知りたい場合は、CT検査が有用です。

確定診断には、細胞診や組織検査が必要になることがあります。リンパ腫などは細胞診で診断に近づけることがありますが、肝細胞腫瘍や胆管系腫瘍では、細胞だけでは良性と悪性の判断が難しいこともあります。その場合は、組織生検や、手術で切除した組織の病理検査が重要です。

治療は腫瘍の種類と広がりで変わります

単一の肝葉に限局した腫瘍で、明らかな転移や広範な浸潤がない場合は、肝葉切除が選択肢になります。良性腫瘍や、切除可能な肝細胞癌では、手術によって長く元気に過ごせることがあります。

一方で、複数の肝葉に広がる腫瘍、胆管癌、リンパ腫、転移性腫瘍では、手術だけで解決できないことがあります。リンパ腫では抗がん剤治療、切除が難しい悪性腫瘍では内科治療や緩和ケアを中心に考えます。

猫の肝臓腫瘍では、腫瘍への治療と同じくらい、食欲を保つ治療が大切です。吐き気止め、食欲を支える薬、点滴、栄養管理、必要に応じた食道チューブなどを使い、肝リピドーシスの悪化を防ぎます。

緩和ケアも大切な治療です

すでに進行している場合でも、何もできないわけではありません。

吐き気を減らす。
食べられるようにする。
脱水を補正する。
黄疸によるだるさを和らげる。
腹水や痛みを管理する。
家で落ち着いて過ごせる時間を増やす。

これらはすべて大切な治療です。根治が難しい場合でも、猫が苦しまず、穏やかに過ごせる時間を作ることはできます。

まとめ

猫の肝臓腫瘍は、初期には症状が出にくく、検査で偶然見つかることがあります。

一方で、食欲不振をきっかけに肝リピドーシスを併発すると、黄疸や肝不全へ急速に進むことがあります。猫では「数日食べない」が大きな問題になるため、様子を見すぎないことが大切です。

肝臓腫瘍の治療は、腫瘍の種類、場所、広がり、全身状態によって大きく変わります。手術で長期生存を目指せる場合もあれば、内科治療や緩和ケアを中心にした方がよい場合もあります。

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