浸潤性脂肪腫を切除前に断定することは、簡単ではありません。ただし、触診、細胞診、超音波検査、CTやMRIなどを組み合わせることで、「通常の脂肪腫ではなく、浸潤性脂肪腫の可能性がある」と判断できることはあります。
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
細胞診だけでは浸潤性脂肪腫を区別できない
細胞診では、脂肪腫であることを推定できる場合があります。しかし、それが通常の皮下脂肪腫なのか、筋肉や筋膜の中へ入り込む浸潤性脂肪腫なのかまでは、区別できないことが一般的です。
細胞診は、針を刺して採取できた一部の細胞を観察する検査です。脂肪細胞が採取されたことは確認できても、腫瘍が筋肉の中へどこまで入り込んでいるか、周囲の組織とどのような関係にあるかまでは判断できません。
そのため、細胞診で脂肪腫が疑われても、「簡単に切除できる脂肪腫」とは限りません。
触って動きにくい脂肪腫は注意が必要
一般的な皮下脂肪腫は、触るとやわらかく、周囲との境界が比較的はっきりしており、皮膚の下で動かしやすいことがあります。
一方、筋肉内脂肪腫や浸潤性脂肪腫では、触っても境界がわかりにくかったり、周囲の組織に固定されているように感じたりすることがあります。
しこりが深い位置にある、動かしにくい、筋肉と一緒に動くといった場合には、単純な皮下脂肪腫ではなく、筋肉の中に広がるタイプの脂肪腫も考える必要があります。
超音波検査で脂肪腫の深さを確認する
超音波検査は、しこりの最初の評価として役立つことがあります。腫瘤が皮下にあるのか、筋肉に接しているのか、筋肉の中に存在するのか、内部が均一かどうかなどを確認できます。
ただし、筋肉内脂肪腫や浸潤性脂肪腫の広がりを、超音波検査だけで正確に判断するのは難しいことがあります。
エコーで脂肪腫らしく見えることと、手術で簡単に切除できることは別の問題です。深い場所にある場合や境界が不明瞭な場合には、さらに詳しい画像検査が必要になります。
CTやMRIは手術範囲を考えるために役立つ
しこりが大きい、深い、境界がわかりにくい、筋肉に固定されている、切除後に再発している、歩き方や体の動きに影響している場合には、CTやMRIなどの画像検査を検討します。
CTやMRIは、浸潤性脂肪腫という診断名をつけるためだけの検査ではありません。腫瘤が筋肉の中でどこまで広がっているか、筋膜を越えていないか、周囲の骨、血管、神経とどのように接しているかを確認するために役立ちます。
これらの情報は、手術でどこまで切除する必要があるか、切除によってどのような機能障害が起こる可能性があるかを考えるうえでも重要です。
確定診断には境界部を含めた病理検査が重要
浸潤性脂肪腫は、切除前に完全に確定するというよりも、診察、細胞診、超音波検査、必要に応じたCTやMRIを組み合わせて、浸潤性の可能性を評価することが重要です。
確定診断には、腫瘤の中心部分だけでなく、脂肪組織が筋肉や筋膜へ入り込んでいる境界部分を含めた組織検査が必要です。
浸潤性脂肪腫を構成する脂肪細胞自体は、通常の脂肪腫とよく似ています。そのため、病理検査では脂肪細胞の形だけでなく、脂肪組織が周囲の筋肉へ入り込んでいるかどうかが重要になります。
CTやMRIの所見、手術中に確認された周囲組織への入り込み、過去の切除歴や再発歴なども、診断を考える材料になります。
浸潤性の可能性を考えて手術を計画する
筋肉の中にある脂肪のしこりは、通常の皮下脂肪腫よりも慎重に評価する必要があります。
手術前に浸潤性脂肪腫の可能性を考えず、小さな範囲だけを切除すると、腫瘍が周囲に残り、再発することがあります。一度手術を行うと、傷あとや組織の癒着によって、再手術が難しくなる可能性もあります。
切除前に浸潤性の可能性を考え、必要な画像検査を行って手術範囲を計画することが、取り残しや再発を減らし、余計な再手術を避けることにつながります。
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