現在のがん治療には、外科手術、放射線治療、抗がん剤という大きな柱があります。
では、この3つを古い順に並べるとどうなるでしょうか。
答えは、外科手術→放射線治療→抗がん剤です。
単に「何年に何が発見された」と年代を覚えるより、「どれが古い?」と質問された方が考えたくなります。学生さんにがん治療の歴史を説明するときにも、私はこのような質問から入るようにしていました。
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
近代外科はいつから始まった?
腫瘍を切り取るという発想そのものは古代からありました。しかし、昔の手術には大きな壁がありました。
痛みと感染です。
1846年、William Mortonによるエーテル麻酔の公開実演が成功しました。さらに1860年代にはJoseph Listerが消毒法を外科へ導入します。
麻酔によって痛みを抑える。消毒・無菌操作によって感染を防ぐ。この二つがそろったことで、大きな手術を安全に行える近代外科が発展していきました。
放射線治療の始まりはX線の発見
次に登場したのが放射線治療です。
1895年、ドイツのWilhelm Conrad RöntgenがX線を発見しました。有名なのが、妻の手を撮影したX線写真です。
驚くことに、発見からわずか4年後の1899年には、X線によって皮膚がんを治癒させた症例が報告されています。
X線は「体の中を見る技術」としてだけでなく、ほぼ同時に「がんを治療する技術」としても使われ始めたのです。
抗がん剤が登場したのは戦争がきっかけ?
抗がん剤の歴史には、戦争が大きく関係しています。
第一次世界大戦で使用されたマスタードガスに曝露すると、白血球が減少し、骨髄やリンパ組織が障害されることが知られるようになりました。
「それなら、増えすぎたリンパ球、つまりリンパ系腫瘍にも効くのではないか?」
第二次世界大戦中の1942年、Yale大学のLouis GoodmanとAlfred Gilmanらは、この考えからナイトロジェンマスタードをリンパ腫に使用しました。腫瘍は実際に縮小し、ここから近代的ながん化学療法が始まります。
その後、1947年にはSidney Farberが小児白血病に葉酸拮抗薬を使用し、1949年にはナイトロジェンマスタードのメクロレタミンが米国FDAによってがん治療薬として承認されました。これは現在のアルキル化剤につながる、最初期の抗がん剤です。
しかし、一つの薬だけでは、生き残るがん細胞が出てきます。
→ P糖タンパクとは?犬の薬物中毒と抗がん剤耐性をつなぐ仕組み
そこで次に考えられたのが、作用の異なる薬を組み合わせる「多剤併用療法」でした。
この考え方が、現在も犬のリンパ腫で使われているCOPやCHOPへとつながっていきます。
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→ 犬のリンパ腫|CHOPとCOPの違い
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→ 薬はなぜ効き、なぜ効かなくなる?イベルメクチンから抗がん剤耐性まで
