体の60%の水はどこにある?外科輸液の基本

手術のときには、多くの場合、静脈から輸液を行います。では、輸液は何のために入れているのでしょうか。血液が減った分を補っているのでしょうか。その前に、まず体の中の水がどこにあるのかを見てみます。

執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)

体の60%の水はどこにある?

一般的な成犬では、体重の約60%が水分と考えます。体の水分は、大きく「細胞の中」と「細胞の外」に分けられ、体重に対する割合では細胞内液が約40%、細胞外液が約20%です。さらに細胞外液は、間質液が約15%、血管内の血漿が約5%に分けられます。これは体液を理解するための大まかなモデルで、年齢や体格、脂肪量などによって多少変わります。

10kgの犬なら、体内の水は約6Lです。そのうち約4Lが細胞の中、約2Lが細胞の外にあり、血管の中の血漿は約500mLしかありません。意外に少ないと思いませんか。

血漿は5%なのに、血液は8%?

犬の血液量は、おおむね80mL/kg、つまり体重の8%程度と考えます。

ここで、「血管内の水分は約5%なのに、なぜ血液は約8%あるの?」という疑問が出てきます。理由は、血液=水ではないからです。血液は、液体である血漿と、赤血球などの血球からできています。単純化すると、血漿 約5%+血球 約3%=血液 約8%というイメージです。

さらに赤血球は「細胞」なので、その中にある水は体液の分類では細胞内液に含まれます。数字が合わないように見えるのは、分類の仕方が違うためです。

手術中に輸液をするのはなぜ?

麻酔をすると血管が拡張したり、心拍出量が低下したりして、循環が変化することがあります。また、手術前から脱水している場合や、手術中に出血する場合もあります。輸液は、こうした状況で細胞外液や循環を支える手段の一つです。
→ 麻酔モニターで何を見ている?

外科輸液は細胞外液に近い液体を使う

手術中の補正では、入れた水がすぐに細胞の中へ移動してしまっては、循環を保つ目的には向きません。そのため、Naなどを含み、細胞外液に近い組成の等張晶質液を使用します。乳酸リンゲル液などが代表で、AAHAでも低血容量や脱水の補正には等張性のreplacement fluidを用いる考え方が示されています。

では、もっと単純な生理食塩水ではどうでしょうか。「生理」という名前がついているくらいなので、血液にかなり近いのでしょうか。

次は、生理食塩水を1日分入れたときに何が起こるのかを考えてみます。

▼ 次に読む
→ 生理食塩水を1日分入れるとどうなる?
▼ 犬猫の輸液について最初から読む
犬猫の輸液まとめ|外科輸液・維持輸液の考え方

開院準備を更新中! 開院準備を更新中!
上部へスクロール