生理食塩水を1日分入れるとどうなる?

0.9%生理食塩水は、もっとも有名な輸液剤の一つです。名前に「生理」とついているので、体液にかなり近い液体のように感じます。しかし実際には、血漿とまったく同じ組成ではありません。

執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)

生理食塩水は本当に「生理的」?

0.9%生理食塩水1Lには、Na 154mEqCl 154mEqが含まれています。一方でKやCaなどは含まれていません。乳酸リンゲル液のNaは130mEq/L、Clは110mEq/Lなので、生理食塩水は特にClが多い輸液です。大量投与では高クロール性代謝性アシドーシスなどが問題になることがあります。

つまり、生理食塩水は便利な輸液剤ですが、何にでも適した「血液に近い水」というわけではありません。

生理食塩水にはどれくらい塩分が入っている?

犬でも考え方は同じですが、食塩の量をイメージしやすいように、ここでは70kgの成人を例にします。

分かりやすくするため必要水分量を2L/日として考えます。

生理食塩水は0.9%NaClなので、500mLには4.5gNaClが入っています。2Lなら500mLを4本ですから、4.5g×418gNaClです。

1日分のNaは、生食500mLでほぼ入ってしまう

では、人は1日にどれくらいNaを補えばよいのでしょうか。

NICEの成人維持輸液では、Na・K・Clをそれぞれ1mmol/kg/dayとしています。70kgならNaは約70mEq/dayです。Na 70mEqを食塩相当量にすると約4.1gになります。

一方、生理食塩水500mLにはNaが77mEq、NaClとして4.5g含まれています。

つまり、70kg成人の維持輸液で必要とされる1日分のNaは、生理食塩水500mL程度でほぼ入ってしまうことになります。

ところが、水分は約2L必要です。残りの1.5Lまで生理食塩水で補えば、NaやClをかなり多く入れることになります。足がむくんだり腎臓に負担をかけたりすることになります。

水の必要量と塩分の必要量は違う

ここが維持輸液を理解するうえで大切なところです。

「水が2L必要」ということと、「生理食塩水が2L必要」ということは同じではありません。動物は毎日、水と一緒にNaやKなども失いますが、その割合は生理食塩水と同じではありません。

AAHAでも、維持輸液には等張のreplacement fluidよりNa濃度が低く、free waterの割合が多い輸液を使用するという考え方が示されています。長期間、等張晶質液だけで維持量を補うと、Na異常や低K血症につながる可能性があります。

では、水だけを補えばいい?

それなら、「Naは生理食塩水500mL程度から入れて、残り約1.5Lは水にすればいい」と考えたくなります。

しかし、普通の水や注射用の滅菌水をそのまま静脈内に投与することはできません。浸透圧が極端に低いため、赤血球に水が入り、溶血を起こす危険があるからです。

では、必要な水分を確保しながらNaを減らし、さらにKも補うにはどうすればよいのでしょうか。

次は、維持輸液がなぜ「水・Na・K」という組成になっているのかを考えてみます。

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