猫の採血の痛みを減らすエムラクリーム

採血のとき、針を刺される痛みは猫にとっても嫌な経験です。痛みを減らす方法のひとつに、皮膚に塗る局所麻酔薬「エムラクリーム」があります。

執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)

エムラクリームとは?

エムラクリームは、リドカインとプロピトカインという2種類の局所麻酔薬を含む外用薬です。皮膚から麻酔成分が浸透し、針を刺す際の痛みを軽減します。人では医療処置のほか、医療脱毛やしみとりなどでも使用されています。

以前、学生さんが静脈留置を行う際に、局所麻酔剤の塗布で痛みを軽減できないか検討したことがありました。しかし、皮膚の角質層は強力なバリアです。通常のキシロカインゼリーを皮膚に塗るだけでは、十分な麻酔効果は期待できないと考え、研究対象から除外していました。

ところが、エムラクリームは正常な皮膚から麻酔成分が浸透するように設計された製剤です。今回、Cat Friendly Veterinary Interaction Guidelines 2022を読んで、猫の採血にも利用されていることを知りました。

猫でも効果がある?

2021年に発表された猫18頭の研究では、頸静脈採血の30分前にエムラクリームまたはプラセボを塗布して比較しました。

針を刺したときに身を引いた猫は、エムラ群で9頭中1頭、プラセボ群で9頭中7頭でした。採血が容易と評価された猫もエムラ群の方が多く、穿刺時の反応を減らす効果が示されています。ただし、小規模な研究であり、すべての猫で痛みがなくなるわけではありません。

どのように使うの?

採血予定部位の被毛を必要に応じて刈り、皮膚にクリームを塗布します。研究では、頸静脈部に塗布してフィルムなどで保護し、30分間待ってから採血しました。

実際の塗布量や時間は、猫の体格、健康状態、使用する製剤に応じて獣医師が判断します。猫がクリームを舐めないように保護することも大切です。

抗不安薬とは役割が違う

エムラクリームは皮膚の痛みを減らす薬であり、病院への恐怖や不安を直接取り除く薬ではありません。怖がりな猫では、ガバペンチンなどの来院前抗不安薬や、タオルを使った優しいハンドリングと組み合わせることがあります。

採血の痛みを完全になくすことは難しくても、少しでも嫌な経験を減らすことは、次回の診療を受けやすくすることにつながります。

来院前の準備や、病院に慣れるための方法については、犬や猫が動物病院を嫌がるときの対策でも説明しています。

参考:2022 AAFP/ISFM Cat Friendly Veterinary Interaction Guidelinesでは、予定採血で針を嫌がる猫に、可能なら30分前の外用局所麻酔を推奨しています。

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Cat Friendly Veterinary Interaction Guidelines 2022を読んで
→ 犬や猫が動物病院を嫌がるときの対策

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