猫は犬などと比べても独特の代謝・栄養要求があり、栄養不良の影響を受けやすい動物です。
さらに、入院そのものがストレスとなり、食欲を低下させることがあります。
そのため、「もう少し待てば食べるかもしれない」と長く様子を見るのではなく、必要なら早い段階からfeeding tube(栄養チューブ)を選択肢に入れるように、積極的な介入が印象的でした。
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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
カロリーだけでなく、蛋白質と筋肉量を意識する
猫の栄養管理では、単にカロリーを入れればよいわけではありません。
猫は蛋白質要求量が高く、タウリン、アラキドン酸、ビタミンAなど、猫特有の必須栄養素にも注意が必要です。
特に入院中の食欲不振猫では、筋肉量を守るためにも早期栄養介入が重要です。
入院猫では、炎症性メディエーターや交感神経刺激などによって、hypermetabolic state(高代謝状態)になることがあります。
その結果、
蛋白質分解が進む
→ 負の窒素バランス
→ 筋肉量が減少する
という流れが起こります。
猫が嫌がる処置をできるだけ減らす
入院中は、
やさしく接触する
猫の反応を見ながら進める
タオルの下に隠れたまま処置する
必要な部位だけを出して処置する
といったcat friendly handlingが勧められています。
無理な保定やscruff(首根っこをつかむ保定)は避けます。
入院中は療法食にこだわらない
医学的には療法食が理想でも、入院中の食欲不振猫では、まず自発的に食べることを優先します。
悪心や痛みがある状態で新しい療法食を与えると、その食事自体に嫌悪を形成する可能性があります。
療法食への変更は、状態が回復して自宅に戻ってからでもよいとしています。
強制給餌は避ける
シリンジで無理に食べさせたり、食べ物を口元や体につけて舐めさせたりする方法は推奨されません。
不安、恐怖、frustration(欲求不満)を増やし、長期的な食物嫌悪につながる可能性があります。
食道瘻チューブは長期栄養に使いやすい
O tube(Oesophagostomy tube:食道瘻チューブ)は、食事だけでなく、水分や薬剤も投与でき、自宅管理にも向いています。
このガイドラインの設置手技では、猫を右側臥位にして行います。
チューブ先端は食道遠位1/3に置き、設置後はX線で位置を確認します。
O tube → 右側臥位 → 左頸部から設置
という手技ですが、以前は手勝手の関係で右頸部から入れていたような気もします。
給餌は少量頻回
チューブ給餌では、
1回10~15分かけてbolus feeding(間欠的投与)を1日3~6回
が一つの目安です。
嘔吐や逆流が起こりやすい猫では、CRI(Constant Rate Infusion:持続投与)のほうが許容される場合があります。
ただし、bolusとCRIのどちらが優れているという明確なエビデンスはなく、症例ごとに選択します。
食べない状態を3日以上放置しない
feeding tubeを考える一つの目安は、
RER(Resting Energy Requirement:安静時エネルギー要求量)の80%未満が3日以上
です。
しかも、病院に来てからの日数ではなく、自宅ですでに食べていなかった期間も含めて考えます。
Refeeding syndrome(再栄養症候群)に注意する
長期間ほとんど食べていなかった猫や、著しく衰弱した猫では、refeeding syndrome(再栄養症候群)に注意します。
急に栄養を入れると、
低リン血症
低カリウム血症
低マグネシウム血症
筋力低下
神経症状
溶血性貧血
血糖異常
などを起こす可能性があります。
再栄養症候群の高リスク猫では、
1日目は20% RER以下から開始し、4~10日かけて増量
します。
このガイドラインで一番印象に残ったのは、
食欲が戻るのを待ちすぎない
無理に食べさせない
必要なら早めにチューブを使う
の3点です。
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