胸腰部IVDE(Intervertebral Disc Extrusion:椎間板突出)は、重症になるほど内科治療と手術の成績差が大きくなります。
歩行可能な症例では内科治療も十分選択肢になりますが、歩行不能の不全麻痺、対麻痺、さらにDPN(Deep Pain Negative:深部痛覚消失)となるにつれて、外科治療が推奨されます。
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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
「絶対安静4週間」は、実は強いエビデンスではない
内科治療では、少なくとも4週間の運動制限が推奨されています。
ただし、運動制限なしから4週間超まで比較した研究では、制限期間と転帰に明確な関連は認められていません。
それでも4週間の運動制限を勧める理由は、annulus fibrosus(線維輪)の治癒を促すためと考えられています。エビデンスは強くありません。
急性期のステロイドはroutineには使わない
急性TL-IVDEの内科治療で、副腎皮質ステロイドをroutineに使用することは推奨されていません。
また、かつては急性脊髄損傷に対して大量ステロイドによる神経保護が行われていましたが、現在は犬の急性TL-IVDEでroutineに行う根拠は乏しく、推奨されていません。
一方、NSAIDsは、禁忌がなければ使用が推奨されています。
オピオイドが必要なほど痛ければ入院
オピオイドが必要なほど疼痛が強い犬は、疼痛が十分にコントロールされるまで入院管理が推奨されています。
単純に「椎間板ヘルニアだから自宅安静」というわけではありません。
重症例では、できるだけ早い減圧を考える
重度の神経障害では、できるだけ早く片側椎弓切除術などによる減圧を行うことが病態生理学的には合理的です。
ただし、「24時間以内でなければ回復しない」といった明確な時間のcut-offは支持されていません。
重症DPN症例では、durotomy(硬膜切開)も注目されています。
Fenestrationは再発予防として重要
突出した椎間板は、減圧時にfenestration(椎間板開窓術)を行うことが推奨されています。
さらに隣接する変性椎間板についても、特にダックスフンドやフレンチブルドッグなど再発リスクの高い犬種では、予防的fenestrationを検討します。
IVDE犬では消化管障害にも注意
IVDE犬では、消化管粘膜病変が比較的多く認められます。
病気そのもの、麻酔・手術、NSAIDs、ステロイド、オピオイドなど複数の要因が関与すると考えられています。
消化器症状が出た場合には、NSAIDsやステロイドを中止することが推奨されています。
歩けるようになっても、膀胱機能は遅れて戻る
正常な膀胱機能の回復は、motor recovery(運動機能の回復)より遅れることがあります。
自発排尿を始めても残尿が続くことがあり、触診や超音波検査で膀胱が十分に空になっているか確認する必要があります。
膀胱を用手圧迫で空にしにくい場合には、αアドレナリン受容体拮抗薬などで尿道括約筋を緩めることが推奨されています。
リハビリは推奨されているが、歩行回復効果は明確ではない
PROM(Passive Range of Motion:他動的関節可動域運動)、介助立位、介助歩行などの基本的なリハビリは推奨されています。
ただし、基本的リハビリそのものを「何もしない場合」と比較して、歩行回復を促進することを明確に示したエビデンスは乏しいです。
また、集中的なリハビリを追加しても、基本的リハビリだけの場合より歩行回復が改善することは示されていません。
したがって、少なくとも現時点では、
「リハビリをしないと歩けなくなる」
「高額な集中的リハビリを行えば歩行回復率が上がる」
と説明できるだけの根拠はありません。
進行性脊髄軟化症ではCTRの変化を見る
PMM(Progressive Myelomalacia:進行性脊髄軟化症)は、最初の脊髄損傷部位から壊死・虚血・出血が頭側・尾側へ進行する重篤な病態です。
初めて知ったときは、かなり驚きました。
特に重要な警告所見の一つが、CTR(Cutaneous Trunci Reflex:皮幹反射)のcut-offが時間とともに頭側へ移動することです。
初診時に所見がなくても、その後1~7日で進行することがあるため、DPN症例では経時的な神経学的評価が重要です。
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