ACVIM consensus statement on diagnosis and management of urinary incontinence in dogs (2024)を読んで

犬の尿失禁について、原因の分類と薬物治療を整理することができました。

診断と内科治療は一般診療でも対応できますが、尿道充填剤や人工尿道括約筋などの介入・外科治療については、専門施設への紹介が基本になると思います。

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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)

避妊雌犬では尿失禁が多い

犬の後天性尿失禁の正確な発生率は不明ですが、避妊雌犬では3~20%と報告されています。

雌犬では避妊の有無にかかわらず、雄犬より尿道のコラーゲンの割合が多く、筋肉の割合が少ないという解剖学的特徴があります。

尿失禁は蓄尿障害と排尿障害に分類する

最も重要なのは、

「尿が漏れるのか、尿が出せないためにあふれるのか」

を区別することです。

蓄尿障害では、正常に排尿できるにもかかわらず尿が漏れます。一方、排尿障害では尿を十分に排出できず、膀胱に残った尿があふれて漏れることがあります。

その鑑別には、実際の排尿の観察と排尿後残尿量の測定が重要です。

排尿後残尿量は、0.2~1.0mL/kgを正常、3mL/kg超を異常とする目安が示されています。

雄犬では排尿障害を積極的に疑う

雌犬では尿道括約筋機能不全が多いのに対し、雄犬では機能的尿流出路閉塞などの排尿障害を積極的に考える必要があります。

雄犬の尿失禁では、まず正常な尿線で排尿できているかを確認します。

尿線が弱い、途中で途切れる、排尿後残尿量が多い場合には、尿道閉塞や排尿筋の機能異常を考えます。

尿道括約筋機能不全にはPPAまたはホルモン剤

尿道括約筋機能不全は尿道の閉鎖機能が不十分になる病態です。

雌犬の第一選択薬は、フェニルプロパノールアミン(PPA)またはエストロゲン製剤です。日本ではPPA製剤が国内販売されていないため、エストリオール製剤などが現実的な選択肢となります。

PPAはαアドレナリン受容体への作用によって尿道閉鎖圧を高めます。

副作用として血圧上昇があるため、投与前と投与中の血圧測定が推奨されています。

一方、機能的尿流出路閉塞では尿道を弛緩させる必要があるため、タムスロシンやプラゾシンなどのα遮断薬を使用します。

同じ尿失禁でも、病態によって薬物治療の方向が逆になることが重要です。

難治性尿道括約筋機能不全では尿道充填剤や人工尿道括約筋

内科治療で改善しない尿道括約筋機能不全では、尿道充填剤や人工尿道括約筋が選択肢になります。

尿道充填剤は低侵襲で初期の治療成績も良好ですが、再発が多いことが問題です。

人工尿道括約筋は長期的な効果が期待できますが、尿道狭窄や感染などの合併症があります。

このため、高齢犬では低侵襲な尿道充填剤、若齢犬では長期的な効果を期待して人工尿道括約筋を選ぶという考え方が紹介されています。

ただし、年齢だけで決定するのではなく、尿道の形態、全身状態、飼い主の希望などを考慮して選択します。

尿失禁の診療では、まず蓄尿障害と排尿障害を区別し、適切な薬物治療を行うことが重要です。難治例や解剖学的異常が疑われる症例では、専門施設への紹介を検討します。

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