犬猫の口腔・顎顔面腫瘍切除後の再建について、皮弁の種類と選択方法を解説した総説です。
腫瘍を十分に切除するためには、切除後の欠損をどう閉鎖するか、術前から計画しておく必要があります。
ランダムパターン皮弁(Random pattern flap)
特定の動脈を含まず、皮下血管網から血液供給を受ける皮弁です。
主に3種類あります。
- 前進皮弁(Advancement flap):直線的に移動する
- 回転皮弁(Rotation flap):弧を描いて移動する
- 転移皮弁(Transposition flap):隣接する正常組織をまたいで移動する
皮弁は術後の収縮を考慮し、欠損より10~20%大きく設計します。
一般的には皮弁の長さと幅の比率に制限がありますが、血管が豊富な顔面では、長さ:幅=3:1でも生存できる場合があります。
ただし、細長い皮弁では先端壊死に注意が必要です。
顔面・頭部のランダムパターン皮弁に関する後ろ向き研究では、合併症率は17%でした。前進皮弁と転移皮弁は、回転皮弁より合併症率が低いという結果でした。
回転皮弁は設計を理解しやすい方法ですが、必ずしも合併症が少ないわけではないようです。
軸型皮弁(Axial pattern flap)
特定の動脈と静脈を皮弁内に含める方法です。
ランダムパターン皮弁より血流を確保しやすく、大きな欠損に利用できます。
顔面では、後耳介動脈系、浅側頭動脈系、口角動脈系などの皮弁が使用されます。
特に、口角動脈系筋皮弁(Angularis oris myocutaneous flap)は応用範囲が広く、上顎・下顎・頬・眼窩周囲の再建に利用できます。
著者らも、顔面動脈の枝を利用する皮弁は汎用性と信頼性が高いと評価しています。
ただし、軸型皮弁でも先端壊死は起こります。皮弁を長くしすぎないこと、血管柄をねじらないことが重要です。
側頭筋皮弁(Temporal myofascial flap)
皮膚ではなく、側頭筋と筋膜を利用する皮弁です。
深側頭動脈からの血液供給を維持しながら側頭筋を挙上し、眼窩の下を通して口腔内へ移動させます。
口蓋や眼窩鼻腔欠損の閉鎖に使用された報告があります。
興味深いのは、筋膜を口腔側に向けて縫合しても、時間とともに表面が上皮化することです。実験猫では術後18~24週間で滑らかな口腔粘膜による被覆が得られています。
皮弁の選択は、できるだけ単純な方法から
この論文では、欠損の大きさ、位置、性質、残存する血管から再建方法を選択するアルゴリズムを提案しています。
まず直接閉鎖や局所皮弁を検討し、それでは閉鎖が難しい場合に区域軸型皮弁などを考えます。
皮弁を無理に引っ張って閉鎖するのではなく、十分な剥離によって張力を減らすことが重要です。
また、皮弁の血流を守るため、過剰な張力や基部の損傷を避ける必要があります。
皮弁の種類を覚えるだけでなく、欠損に対してどの組織を、どの方向から、どの程度移動させるかを考えることが重要だと感じました。
