ホーム > 腫瘍まとめ > 種類 > 「ただのイボ」だと思っていませんか?犬の肥満細胞腫が「見た目で騙される」理由
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
肥満細胞腫は悪性腫瘍に分類
肥満細胞腫というと人にはないそうで、動物に特有の腫瘍になります。犬では肥満細胞腫は基本、転移の可能性があるので悪性腫瘍に分類されます。その挙動により病理検査でグレード分類され、2つに分類もしくは3つに分類されます。3分類ですと、良性に近い1、本当に悪いグレード3、中間のグレード2と分類されます。
肥満細胞腫のまとめ
・多発性のことがあります
・肥満細胞腫の基本は局所療法
局所療法は、1. 取り切る, 2. 取りきれなければ放射線治療
・転移の可能性があれば全身療法
多発性のこともあります
グレード1は良性に近いとお伝えしましたが普通の良性腫瘍とは異なり、ゆっくり大きくなるものもあれば、まれに転移するものもあります。また、肥満細胞に含まれるヒスタミンが漏れ出て、痒みを引き起こすこともあります。さらには、多発性のこともあり、複数あるから転移ということにはならず評価に苦しむことがあります。
一年以上存在していても検査をするも肥満細胞腫、ということもあり得ます。また、脂肪腫のような触診所見であったり、虫刺され、イボ、嚢胞であったりします。そのため、見た目や触診だけで見分けようとすると騙されることがあります。
ヒスタミンが症状を誘発
肥満細胞はアレルギーのときにかゆみを引き起こすヒスタミンを放出します。腫瘍となった肥満細胞にもヒスタミンが含まれており、腫瘍が壊れたり腫瘍が大きくなったりすると少量でも漏れることがあります。このため、かゆがったり腫れたりすることがあります。赤く浮腫むこともあります。これをダリエ兆候というのですが、見た目で騙されやすいのです。ヒスタミンが出ると腫れ、ヒスタミンが出ないと腫れが引きます。
診断は細胞診で、グレード分類は病理検査
では、どうやって肥満細胞腫と判断するかといいますと、細胞診(FNA)です。細い針をその病変に刺して細胞を採取します。それをスライドガラスに吹き付け、染色して顕微鏡で観察します。肥満細胞腫でしたら、ヒスタミンを含む特徴的な顆粒を確認できます。
治療は切除が基本
肥満細胞腫と判断されると、大きめに切除することが基本です。切除が難しいときは、お薬を使って小さくしてから切除。ただ、切除が難しいということは、取り残しの可能性が高い。その後の放射線治療や抗がん剤を覚悟してください。
切除したものは病理検査に出します。これにより、グレードがわかり、手術で取り切れたかどうかマージンの判断することになります。マージンが確保されていなければ、再手術するか放射線治療。グレード2や3なら抗がん剤を検討。
触ると脱顆粒で腫れます
以前、肥満細胞腫の治療を終え半年たったので再発がなければ治療終了というワンちゃんがいました。見た目では腫瘍は見つからなかったのですが、担当の研修獣医師が入念に触ったことでヒスタミンの顆粒が壊れたのでしょう。その部分が腫れてしまい飼い主さんは驚いたそうです。手術後の病理検査も重要ですが、手術跡をよく触ることも一助になるかもしれません。
グレード1なら取るだけで完治、グレード3なら治療しても半年。グレード2は中間。手術で確認することが必要ですし、早期に対応することが大切ですね。
病名に肥満とつくことから肥満と関係があるように混乱することがあるかもしれませんが無関係です。この細胞を見つけた人が、細胞内の顆粒を見つけて太った細胞、とつけたことがこの名前の由来だそうです。
しこりが肥満細胞腫かも…と不安な方へ。
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獣医師 圓尾真理
獣医師 圓尾拓也
日本獣医がん学会 腫瘍科認定医1種(I種)
放射線取扱主任者1種
博士(獣医学)
エビデンスにもとづいた情報発信に努めます。