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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
血液検査で「肝臓の数値が高い」と言われたり、「腎臓が悪いかもしれない」と指摘されたりすると、不安になりますよね。また、「血糖値が高いけど大丈夫?」と戸惑う方も少なくありません。血液検査の数値は単独では判断できないものです。ただし、体の異常を早期に見つけるための重要なサインになることも事実です。
血液生化学検査とは?
血液生化学検査は、内臓の働きやダメージの程度を評価する検査です。主に肝臓・腎臓・血糖・タンパク質といった、体の機能に関わる項目を確認します。いわば「内臓の状態を数字で見る検査」と考えるとわかりやすいです。
肝臓の数値(ALT・ALP)
肝臓の評価では、ALTとALPという2つの指標がよく使われます。
ALTは主に肝細胞そのもののダメージを反映する数値です。
肝炎や中毒、腫瘍、薬剤の影響などで上昇することがあります。
一方でALPは、胆汁の流れや酵素の誘導を反映する指標で、胆道系の異常やホルモンの影響(特に犬)、ステロイドなどの薬剤によって上昇します。
この2つは似ているようで役割が異なるため、どちらが上がっているかによって意味が変わります。また、軽度の上昇であればすぐに治療が必要とは限らず、経過観察になることも多くあります。重要なのは数値の高さそのものよりも、「どう変化しているか」という推移です。
腎臓の数値(BUN・CRE・SDMA)
腎臓の評価には、BUN、クレアチニン(CRE)、SDMAといった指標を使います。
BUNはタンパク質代謝の老廃物で、腎機能の低下だけでなく脱水や消化管出血でも上昇します。CREはより腎機能を反映する代表的な指標ですが、この数値が上昇している時点で、すでにある程度進行していることも少なくありません。
SDMAは比較的新しい指標で、早期の腎機能低下を捉えやすいとされています。
ただしこれらの数値も、脱水の影響を強く受けるため注意が必要です。そのため、「腎臓の数値が高い=すぐに腎不全」とは限りません。
血糖値(グルコース)
血糖値は、体のエネルギー代謝の状態を示す重要な指標です。血糖値が高い場合は糖尿病が疑われますが、特に猫ではストレスだけでも大きく上昇することがあります。そのため、1回の検査だけで判断することはできません。一方で低血糖は注意が必要で、重度の場合は命に関わることもあります。インスリノーマなどの腫瘍が関与しているケースもあります。
タンパク質(TP・ALB)
タンパク質の項目では、TP(総タンパク)とALB(アルブミン)を確認します。
TPは体全体のタンパク量を示し、脱水で上昇し、栄養不良や体外への漏出で低下します。
ALBは特に重要で、低下すると浮腫(むくみ)の原因になります。
これらの数値は、栄養状態や体内のバランスを評価するうえで欠かせません。
異常値の見方で最も重要なこと
ここが一番大切なポイントです。血液検査の数値だけで診断を確定することはできません。その理由として、一時的な変動や個体差があること、そして複数の要因が同時に影響することが挙げられます。実際の診療では、症状、血液検査、画像検査などを組み合わせて総合的に判断します。
すぐ対応が必要なケース
以下のような場合は、早めの対応が必要になります。
・数値が大きく上昇している
・複数の項目に異常がある
・元気消失や食欲不振、嘔吐などの症状がある
このようなケースでは、再検査や追加検査を行い、原因を詳しく調べていきます。
様子見でよいことが多いケース
一方で、軽度の異常のみで症状がなく、初回検査で見つかった場合などは、すぐに治療を行わず一定期間後に再検査で確認することも多くあります。
まとめ
血液生化学検査は、内臓の状態を評価する重要な検査です。特に肝臓、腎臓、血糖は日常診療でも頻繁に確認される項目です。ただし数値は単独では判断できず、全体像や経過を踏まえて評価する必要があります。異常があった場合には、再検査や追加検査が重要になります。
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