今回のガイドラインで一番強く感じたのは、「全身性抗菌薬をできるだけ必要な症例に限定する」という考え方です。
犬の膿皮症は抗菌薬を処方する機会の多い疾患ですが、まず細胞診を行い、局所療法を積極的に使い、全身性抗菌薬は必要な症例だけに使います。
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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
抗菌薬を使う前に、まず細胞診
膿皮症が疑われる場合、抗菌薬を使う前に全例で細胞診を行うことが推奨されています。
膿皮症を支持する所見としては、
細胞内細菌
核のストリーキング(nuclear streaking、streamingとも呼ばれる)を伴う細胞外細菌
などがあります。
見た目だけで「膿皮症だから抗菌薬」とするのではなく、まず細菌感染を確認するという考え方です。
表面性・浅在性膿皮症は、局所療法が第一選択
表面性(surface)・浅在性(superficial)膿皮症では、局所抗菌療法単独が第一選択です。
浅在性膿皮症でも、多くの犬で1~2週間以内に改善がみられ、3~4週間程度で病変の消失が期待できます。
全身性抗菌薬を使うのは、
局所療法で十分な改善が得られない場合
または
犬の性格や飼い主さんの事情などで局所療法が実施できない場合
に限ります。
ホットスポットは痛みを伴うことも多いため、鎮痛も考慮するとされています。
培養は「どこから採るか」も大切
排膿している病変を培養するときは、表面に出ている膿をそのまま採るのではありません。
表面の膿を除去し、70%アルコールで1回清拭して乾燥させ、その後もう一度圧迫して出てきた膿を採取します。
深在性病変では、必要に応じて鎮静や麻酔を行い、毛刈り・消毒したうえで、生検組織やFNA(Fine Needle Aspiration:細針吸引)で深部から採取します。
表面にいる菌ではなく、本当に病変を作っている菌を採るということですね。
局所療法では、洗うことにも意味がある
局所療法では、薬剤をつけるだけでなく、
水、ワイプ、シャンプーなどでデブリを除去し、biofilm(バイオフィルム)を物理的に壊す
ことも治療効果を高める可能性があります。
現在、犬の膿皮症で最も有効性の裏付けが強い局所薬は、クロルヘキシジン2~4%です。局所抗菌薬よりも、まずクロルヘキシジンなどの消毒薬を優先する考え方になっています。
第一選択薬でも耐性菌への影響はある
全身性抗菌薬が必要な場合、耐性菌リスクが低ければ、アモキシシリン・クラブラン酸、セファレキシン、セファドロキシル、クリンダマイシンなどが第一選択薬になります。
ただし、第一選択薬だから耐性菌への影響がないわけではありません。
アモキシシリン・クラブラン酸や第一世代セフェムでも、治療中に耐性 E. coli の便中排泄を増やす可能性が指摘されています。
培養・感受性試験の費用を避けて経験的治療を選んでも、耐性菌で治療に失敗すれば、結果として培養検査より費用がかかる可能性があります。そのため、病院や検査機関にもBC/AST(Bacterial Culture and Antimicrobial Susceptibility Testing:細菌培養・抗菌薬感受性試験)を利用しやすい料金設定が求められています。
クリンダマイシンとエンロフロキサシンの用量も印象的
クリンダマイシンは、5.5 mg/kgを12時間ごとでも治療成功例がありますが、より安定した臨床効果を得るため11 mg/kgを12時間ごとが推奨されています。
またエンロフロキサシン(バイトリル)は5~20 mg/kgという用量範囲ですが、Staphylococcus spp.に対しては最低10 mg/kgが推奨されています。
「皮膚感染ならエンロ5 mg/kg」という感覚では、少ない可能性があるということですね。
繰り返す膿皮症では、抗菌薬より原因検索
年に2回以上、全身性抗菌薬が必要になるような再発性膿皮症では、基礎疾患の検索を強化・再検討することが推奨されています。
特にアレルギー性皮膚疾患が背景にある場合には、抗菌薬を繰り返すのではなく、アレルギーそのものをコントロールすることが優先されます。
今回のガイドラインを読むと、
細胞診で確認する → 浅い膿皮症なら局所療法 → 全身性抗菌薬が必要なら培養・感受性試験を活用する → 再発するなら基礎疾患を探す
という流れが、とても明確になった印象です。
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