免疫介在性血小板減少症(ITP)の治療についてまとめたACVIMのコンセンサスです。
これまでITPというと、「血小板がものすごく少ないから、とにかく免疫抑制を強くする」という印象がありましたが、今回読んでみると、血小板数だけではなく、実際にどこからどの程度出血しているかを重視して治療を組み立てています。
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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
ビンクリスチンは全例に必要なわけではない
犬のITPでは、グルココルチコイドにビンクリスチンを1回追加すると、血小板の回復が早まり、入院期間が短くなることが示されています。
ただし、ビンクリスチンは「血小板を増やすために絶対必要」という薬ではありません。
出血がほとんどない症例なら、まずグルココルチコイド単独でもよく、ビンクリスチンは重度の出血がある犬を早く安全域に持っていきたいときの緊急補助療法、という位置づけです。
犬では0.02 mg/kgを静脈内に1回投与する方法が推奨されています。
一方、猫のpITPではビンクリスチンの有効性を示すデータが乏しく、現時点では推奨されていません。
ビンクリスチンとシクロスポリンは少し間をあける
ビンクリスチン投与後すぐにシクロスポリンを開始すると、好中球減少のリスクが高くなる可能性があります。
そのため、第2免疫抑制薬としてシクロスポリンを使う場合には、ビンクリスチン投与から数日あけて開始することが提案されています。
併用する場合には、好中球数も確認しておいた方がよさそうです。
第2免疫抑制薬は、どれが一番よいか分からない
犬では、グルココルチコイドに追加する第2免疫抑制薬として、
アザチオプリン
modified cyclosporine
レフルノミド
MMF(ミコフェノール酸モフェチル)
などが候補になります。
しかし、どの薬が明らかに優れているかというエビデンスはありません。
さらに、最初から全例に第2免疫抑制薬を追加した方がよいという根拠も乏しく、ステロイド開始後5~7日程度で反応がない場合、ステロイドの副作用が問題になる場合、減量中に再発した場合などに追加を検討します。
免疫抑制薬を3剤以上に増やしても治療成績がよくなるという根拠はなく、むしろ副作用が増えるため推奨されていません。
治療目標は血小板を正常値まで戻すことではない
このコンセンサスでは、治療目標を
血小板数10万/μL以上
かつ
出血がないこと
としています。
血小板を正常範囲まで戻すこと自体が目標ではありません。
また、ITPでは血小板数と出血の重症度が必ずしも一致しません。
同じように血小板数が非常に低くても、ほとんど出血しない犬もいれば、消化管、肺、中枢神経などに重篤な出血を起こす犬もいます。
そのため、治療強度を決めるうえでは、血小板数だけでなく実際の出血を評価することが重要です。
難治例ではロミプロスチムや脾摘も選択肢
通常の内科治療で反応しない犬では、TPO受容体作動薬であるロミプロスチムや脾摘が次の選択肢になります。
ロミプロスチムは、血小板の破壊を抑える薬ではなく、血小板産生を促す薬です。
難治性ITP犬で血小板数が増加した報告がありますが、まだ症例数が少なく、エビデンスは弱い段階です。また非常に高価であることも、一般的な使用を難しくしています。
脾摘でも長期寛解する犬はいますが、脾摘後に再発する犬も少なくありません。
したがって、「ITPなら脾摘」ではなく、内科治療に反応しない症例や、免疫抑制薬の副作用のため治療継続が難しい症例で検討する治療です。
また、脾摘する前にはベクター媒介感染症など、ITPの原因となり得る感染症を十分に除外しておく必要があります。
減薬は急がない
寛解後のグルココルチコイドは、血小板数が安定していることを確認しながら、約25%ずつ2~4週間ごとに減量することが提案されています。
再発した症例では、その後の減量をさらにゆっくり行います。
第2免疫抑制薬をどの順番で減らすかについては明確なコンセンサスはありませんが、全体としては数か月かけて慎重に減量していく考え方です。
ITPの治療では、血小板数を正常化させることよりも、出血を止め、安全な血小板数まで回復させ、その状態を維持しながら免疫抑制薬をゆっくり減らしていくことが大切なのだと感じました。
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