猫が何度もトイレに行く、血尿が出る、排尿するときに力む。このような症状があると、「膀胱炎だから抗生剤が必要」と思われるかもしれません。
しかし猫では、膀胱炎のような症状があっても、細菌感染が原因ではないことが多くあります。
特に若い猫から中年の猫では、特発性膀胱炎(FIC)が代表的な原因です。そのため、猫の排尿症状に対して一律に抗生剤を使用するわけではありません。
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
猫の膀胱炎は細菌が原因とは限らない
人では細菌性膀胱炎がよくみられるため、「膀胱炎=細菌感染」というイメージがあります。
しかし猫では事情が違います。
2025年のiCatCareガイドラインでは、健康な成猫で下部尿路症状の原因が尿路感染症(UTI)である割合は3%未満とされています。
猫の頻尿や血尿の原因には、
特発性膀胱炎(FIC)、尿路結石、尿道閉塞、細菌性尿路感染症、腫瘍などがあります。
症状だけでは区別できないことも多いため、「血尿があるから細菌感染」とは判断できません。
→ 猫の特発性膀胱炎(FIC)|ストレスとの関係・治療と再発予防
細菌感染を疑いやすい猫もいる
一方で、細菌性の尿路感染症がほとんどないわけではありません。
特に10歳を超える高齢猫や慢性腎臓病の猫では、若い健康な猫より尿路感染症が増えるため、細菌感染も考えて検査します。
糖尿病などの基礎疾患がある猫、尿道カテーテルを使用したことがある猫、会陰尿道瘻形成術を受けた猫などでも、状況によって感染の可能性を考えます。
つまり、
若い猫の頻尿・血尿 → FICなどをまず考える
高齢猫や基礎疾患のある猫 → 細菌感染についても確認する
という違いがあります。
抗生剤を使う前に尿培養
細菌感染が疑われる場合には、尿検査だけでなく尿培養を行うことがあります。
尿培養では、できれば抗生剤を使用する前に膀胱穿刺で尿を採取し、細菌が実際に増殖するか、どの抗生剤が効くかを確認します。
採尿方法によっては外部から細菌が混入することもあるため、尿の中に細菌らしいものが見えただけで感染と決めるわけではありません。
尿に細菌がいても治療しないことがある
少し意外かもしれませんが、尿培養で細菌が検出されても、必ず抗生剤を使うわけではありません。
症状がないのに尿から細菌が検出される状態を**無症候性細菌尿(subclinical bacteriuria)**と呼びます。
猫では、無症候性細菌尿に対して抗菌薬を使用することは一般的には推奨されていません。年齢や基礎疾患、腎盂腎炎の可能性などを考えて治療が必要か判断します。
「細菌がいる=必ず退治する」というわけではありません。
FICには抗生剤ではなく痛みと環境への対応
特発性膀胱炎(FIC)は、通常は細菌感染による病気ではありません。
そのため、抗生剤が基本的な治療になるわけではなく、急性期にはまず痛みをやわらげ、水分摂取を増やします。
さらに再発を繰り返す猫では、トイレ、水飲み場、隠れ場所、多頭飼育での猫同士の関係などを見直すMEMO(多面的環境改善)が重要になります。
「膀胱炎だから抗生剤」とは限らない
猫が何度もトイレに行ったり血尿が出たりしても、その原因が細菌感染とは限りません。
特に若い健康な猫では、特発性膀胱炎(FIC)が代表的な原因です。一方、高齢猫や慢性腎臓病などの基礎疾患がある猫では、細菌性尿路感染症についても確認する必要があります。
大切なのは、最初から抗生剤を使うことではなく、何が原因で排尿症状が起きているのかを考えることです。
また、何度もトイレに行っているのに尿がほとんど出ていない場合は、特に雄猫では尿道閉塞の可能性があります。これは緊急性の高い状態なので、すぐに動物病院へ相談してください。
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