猫も熱中症になります。特に危険なのは、閉め切った室内や車内、風通しの悪いキャリーなど、暑い場所から逃げられない状況です。
猫は人のように全身で汗をかけません。冷たい床に体をつける、耳から熱を逃がす、毛づくろいで唾液を蒸発させるなどして体温を調節しますが、高温多湿では放熱が追いつかなくなります。
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
猫の熱中症で見られる症状
初期には、落ち着きがない、呼吸が速い、よだれが増える、耳や肉球が熱い、歯ぐきや舌が赤い、元気がないなどの症状が見られます。
特に注意したいのが、口を開けてハァハァと呼吸する状態です。猫は基本的に鼻で呼吸するため、安静時の開口呼吸は緊急性の高いサインです。熱中症だけでなく、心臓病や呼吸器疾患でも起こります。
重症化すると、嘔吐、下痢、血便、ふらつき、けいれん、意識低下などが見られます。舌や歯ぐきが青紫色の場合は、重い酸素不足が疑われます。
熱中症では体内で何が起こる?
熱中症は、単に体温が高くなるだけではありません。高体温と脱水によって全身の細胞や血管が傷つき、腎臓、肝臓、脳、消化管などに障害が起こります。
血液を固める仕組みが乱れ、血栓と出血が同時に起こるDICや、多臓器不全につながることもあります。体温が下がって元気に見えても、数時間から数日後に臓器障害が明らかになる場合があります。
→ 熱中症は元気になっても安心できない|翌日に急変することがある理由
熱中症を疑ったときの応急処置
まず動物病院へ電話し、受診の準備をしながら冷却を始めます。
1. エアコンの効いた涼しい場所へ移動する
2. 冷たすぎない水で首、わき、内股、おなか、肉球をぬらす
3. 扇風機やエアコンの風を当てる
4. 冷却しながら動物病院へ向かう
氷水に入れたり、保冷剤を長時間直接当てたりすると、皮膚の血管が縮み、体の中心に熱がこもることがあります。
意識が低下している猫や呼吸が苦しい猫には、無理に水を飲ませないでください。誤嚥する危険があります。人用の解熱剤も中毒を起こすため、絶対に使用しないでください。
熱中症を予防するために
夏の留守番では扇風機だけに頼らず、エアコンで室温と湿度を管理しましょう。複数の水飲み場を用意し、猫が自由に涼しい場所へ移動できる環境を作ります。
子猫、高齢猫、肥満の猫、長毛種、鼻の短い猫、心臓病や腎臓病のある猫は特に注意が必要です。夏の車内には、短時間でも猫だけを残してはいけません。
→ 犬の夏の留守番、エアコンは何度?つけっぱなしの室温・湿度管理
まとめ
電車での移動では、鳴き声を抑えるためにキャリーへタオルをかけたり、荷物で通気孔をふさいだりすると、内部の温度と湿度が上がりやすくなります。
携帯ファンを使う場合も、内部の空気をかき回すだけではなく、外の空気が入り、湿った空気が反対側から出るように風を通すことが大切です。
→ 換気の悪いキャリー内、パンティングで体は冷える?
猫が安全に過ごせる温度は、年齢、体格、被毛、健康状態、湿度などによって変わります。「28℃なら安全」「30℃を超えたら危険」と一律に区切らず、猫が過ごす場所に温湿度計を置き、暑い時期はエアコンで室温と湿度を管理しましょう。