猫の肥満細胞腫は、発生する場所によって治療や予後が大きく異なる腫瘍です。
特に、皮膚、脾臓、消化管では性格がかなり違います。そのため、猫の「肥満細胞腫だから予後が悪い」と一括りにはできません。
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
肥満細胞腫とは
肥満細胞は、アレルギーや炎症に関わる免疫細胞です。この細胞が腫瘍性に増えたものを肥満細胞腫と呼びます。
「肥満」という名前ですが、猫が太っていることとは関係ありません。
皮膚の肥満細胞腫
猫では皮膚に小さなしこりとして見つかることがあります。診断には細胞診がよく使われます。
猫の皮膚肥満細胞腫は、犬と比べて比較的おとなしいものが多く、手術だけで長期間経過することも珍しくありません。
ただし、悪性度の高いタイプもあるため、切除した場合は病理検査で性質を確認します。
脾臓の肥満細胞腫
猫では脾臓にも肥満細胞腫がよくみられます。
食欲低下、体重減少、元気消失などから見つかることもあれば、超音波検査で脾臓の腫れを指摘されて見つかることもあります。
特徴的なのは、ほかの臓器にも肥満細胞が認められていても、脾臓摘出に意味がある場合があることです。
64頭の報告では、脾臓摘出を受けた猫の腫瘍関連生存期間中央値は856日、受けなかった猫では342日でした。
そのため、「転移しているから手術しても意味がない」と単純には判断できません。
→ 猫の脾臓腫瘍|しこり・脾臓腫大が見つかったときに考えること
消化管の肥満細胞腫
胃や腸にできることもあり、食欲低下、嘔吐、下痢、体重減少などがみられます。
消化管型は以前、予後不良と考えられることが多かったのですが、31頭の報告では生存期間中央値は531日でした。
つまり、消化管型だから必ず予後が悪いわけではありません。
一方で、硬化性肥満細胞腫というタイプは進行が速く、リンパ節や肝臓への転移も多いため注意が必要です。
治療
皮膚では手術、脾臓では脾臓摘出が中心になります。
消化管では手術のほか、プレドニゾロン、ロムスチン、クロラムブシルなどを使用することがあります。
また、切除できない、多発している、再発している場合などには、トセラニブ(パラディア)などの分子標的薬を検討することもあります。
猫の肥満細胞腫は「どこにあるか」が大切
猫の肥満細胞腫では、病名だけで予後を判断することはできません。
皮膚なら手術だけで良好に経過することが多く、脾臓ではほかの場所に病変があっても脾臓摘出によって長期生存する猫がいます。
一方で、消化管には進行の速いタイプもあります。
そのため、肥満細胞腫と診断されたら、「悪性かどうか」だけでなく、「どこに発生していて、どこまで広がっているか」を確認することが大切です。
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