犬と猫の日帰り手術は可能です。ただし、「手術が小さいから日帰りで大丈夫」という単純な話ではありません。大切なのは、手術の内容、麻酔時間、出血の可能性、痛みの程度、年齢、持病、そして帰宅後にご家族が様子を見られるかどうかです。
麻酔前の全身状態を評価する基準としてASA-PS分類が使われます。これは、健康状態や持病の程度を麻酔前に整理するための分類です。ASA分類だけで手術リスクがすべて決まるわけではありませんが、年齢、手術の大きさ、麻酔時間などと合わせて判断する重要な材料になります。若くて健康な犬猫と、心臓病・腎臓病・呼吸器疾患を持つ高齢犬猫では、日帰りにできるかどうかの判断は変わります。
日帰り手術の代表例としては、避妊・去勢手術、皮膚や皮下の小さなしこりの切除、歯科処置の一部などがあります。短時間で終わり、出血が少なく、術後の痛みが内服薬で管理できる場合は、その日のうちに帰宅できることがあります。一方、強い痛みが予想される手術、出血の確認が必要な手術、呼吸や循環器に不安がある症例では、点滴入院となります。
日帰りにできるかは、退院前の状態で決まる
日帰りにできるかどうかは、手術前だけでなく、手術後の状態を見て判断します。人医療の日帰り手術では、PADSSという帰宅判定スコアを使うことがあります。これは、バイタルサイン、歩行、吐き気、痛み、出血などを点数化し、安全に帰宅できるかを確認する考え方です。動物では人と同じように歩行や吐き気を言葉で確認することはできませんが、「麻酔からしっかり覚めているか」「呼吸が安定しているか」「体温が保てているか」「強い痛みがないか」「出血が続いていないか」を確認する点は同じです。
たとえば、手術自体は短く終わっても、麻酔の覚めが悪い、ふらつきが強い、出血が気になる、痛みが強い、呼吸が荒い場合は、そのまま帰るよりも病院で経過を見た方が安心です。AAHAの麻酔ガイドラインでも、回復は健康状態、麻酔方法、麻酔時間、体温などに左右されるとされています。つまり、同じ手術名でも、状態によって帰宅できるタイミングは変わります。
帰宅後の見守りも大切です
日帰り手術では、帰宅後の見守りがとても重要です。手術当日は、いつもより眠そうにする、少し食欲が落ちる、動きがゆっくりになることがあります。多くは麻酔や手術後の自然な反応ですが、ぐったりして反応が悪い、呼吸が苦しそう、出血が続く、強い痛みがある、何度も吐く場合は、すぐに動物病院へご連絡ください。
つまり、日帰り手術は可能です。ただし大切なのは、当日退院ではありません。安全に帰れる状態かどうかです。日帰りにすることが優しい場合もあれば、入院して見守ることが好ましい場合もあります。体調、手術内容、麻酔後の回復、ご家族の見守り体制を合わせて、いちばん安全な方法を選ぶことが大切です。