犬のお腹のしこり|脂肪腫、乳腺腫瘍、肥満細胞腫、ヘルニアの見分け方

犬のお腹のしこりは、見た目や触った感じだけで良性か悪性かを判断できません。柔らかいから良性、小さいから大丈夫、動くから心配ない、とは言い切れません。反対に、大きくても良性の脂肪腫であることもあります。

犬のお腹のしこりには、皮膚や皮下脂肪にできるもの、乳腺にできるもの、腹壁から出てくるヘルニア、まれにお腹の中の臓器に関係するものがあります。つまり、同じ「お腹のしこり」でも、原因はかなり違います。

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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)

よくある原因

犬のお腹でよく見つかるしこりの一つが脂肪腫です。中高齢の犬に多く、皮下に柔らかく触れることがあります。多くは良性ですが、少しずつ大きくなって歩きにくくなったり、場所によって生活の邪魔になったりすることがあります。また、脂肪腫に見えても、まれに別の腫瘍であることもあります。

未避妊の雌犬では、乳腺腫瘍も重要です。犬の乳腺は胸からお腹、鼠径部まで広く分布しているため、「お腹のしこり」として気づかれることがあります。犬の乳腺腫瘍は良性と悪性が混在します。小さいうちに見つけて、必要に応じて切除と病理検査を行うことが大切です。

もう一つ注意したいのが肥満細胞腫です。肥満細胞腫は、見た目が非常にまぎらわしい腫瘍です。赤く腫れることもあれば、脂肪腫のように柔らかく触れることもあります。触ったあとに急に腫れる、赤くなる、かゆがる、吐く、下痢をする、といった変化がある場合は注意が必要です。

ヘルニアのこともあります

お腹のしこりが、腫瘍ではなくヘルニアであることもあります。臍ヘルニアや鼠径ヘルニアでは、腹壁のすき間から脂肪や腸などが皮下に出て、しこりのように触れます。

柔らかく、押すと戻るようなしこりではヘルニアを疑います。ただし、急に硬くなる、痛がる、戻らない、吐く、元気がないという場合は、嵌頓ヘルニアの可能性があります。腸などが締めつけられると血流が悪くなり、緊急手術が必要になることがあります。

受診を急いだ方がよいサイン

短期間で大きくなる、赤い、熱を持つ、出血する、表面が破れる、痛がる、なめ続ける、急に硬くなる、元気や食欲が落ちる、嘔吐や下痢がある。このような変化がある場合は、早めの受診をおすすめします。

特に、しこりがある犬で嘔吐や黒い便がある場合は、単なる皮膚の問題ではなく、肥満細胞腫などによる全身への影響を考えることがあります。

最初に行う検査

お腹のしこりでは、まず細胞診を行うことが多いです。細い針をしこりに刺して細胞を採り、顕微鏡で確認する検査です。多くの場合、麻酔なしで短時間に行えます。

細胞診では、脂肪腫らしいのか、炎症なのか、肥満細胞腫などの腫瘍が疑われるのかを確認します。ただし、細胞診だけでは確定できないこともあります。その場合は、しこりの一部または全部を取って、病理組織検査を行います。病理検査では、腫瘍の種類、悪性度、取り切れているかどうかを確認できます。

必要に応じて、超音波検査やレントゲン検査も行います。ヘルニアかどうか、腹腔内に関係があるか、リンパ節や肺への転移が疑われるかを確認するためです。

治療の考え方

治療は、しこりの種類によって大きく変わります。脂肪腫のように良性で、生活に支障がなければ経過を見ることもあります。乳腺腫瘍や肥満細胞腫などが疑われる場合は、手術で切除し、病理検査で診断を確定することが多くなります。

悪性腫瘍では、見えているしこりだけを取ればよいとは限りません。周囲に目に見えない腫瘍細胞が広がっていることがあるため、正常に見える組織も含めて広めに切除することがあります。肥満細胞腫では、手術だけでなく、分子標的薬や抗がん剤を組み合わせることもあります。

一方で、高齢、心臓病、腎臓病、体力の低下などがある場合は、すべての犬に大きな手術が向いているわけではありません。検査で病気の性質を確認したうえで、手術、内科治療、経過観察、緩和ケアを組み合わせて考えます。

様子を見る前に確認したいこと

犬のお腹のしこりは、良性のこともあります。けれど、見た目だけで安心することはできません。小さいうちであれば、検査も治療も選択肢が多くなります。反対に、時間がたって大きくなったり、周囲に広がったりすると、手術の負担が大きくなることがあります。

「最近見つけた」「少し大きくなっている」「なめている」「赤い」「雌犬で乳腺のあたりにある」「高齢犬で新しく出てきた」。このような場合は、一度動物病院で確認しておくといいと思います。

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