執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
犬の直射日光による体温上昇は、どれくらいの熱量になるのでしょうか。10kgの犬が真夏の日差しを10分間浴びた場合を、日射エネルギーと犬の熱容量から計算します。
10kgの犬に当たる日射エネルギー
真夏の日射を約1,000W/m²、10kgの犬が太陽に向ける投影面積を約0.15m²と仮定します。
犬の体表に当たる日射エネルギーは、
1,000W/m² × 0.15m²
=150W
です。
150Wとは、犬の体表に1秒間当たり150Jのエネルギーが当たるという意味です。
1分間では約2.2kcal
150Wを1分当たりの熱量に換算すると、
150J/秒 × 60秒 ÷ 4,184
=約2.2kcal/分
となります。
10分間では、
約2.2kcal/分 × 10分
=約22kcal
です。
つまり、真夏の直射日光を10分間浴びると、10kgの犬の体表には約22kcalの日射エネルギーが当たる計算です。
約22kcalは体温何℃分?
10kgの犬の熱容量を約10kcal/℃と仮定します。
放熱がまったくなく、日射エネルギーをすべて体が吸収した場合、
22kcal ÷ 10kcal/℃
=約2.2℃
となります。
つまり、真夏の直射日光を10分間浴びると、10kgの犬の体温を約2.2℃上げるだけの日射エネルギーが体表に当たる計算です。
10kgの犬の体温を1℃上げるために必要な熱量や時間については、次の記事でも計算しています。
実際に体温が2.2℃上がるわけではない
この計算は、日射エネルギーをすべて体内に蓄え、まったく放熱しなかった場合の理論値です。
実際には、
- 日射の一部が被毛で反射される
- 被毛や皮膚の表面から空気へ熱が逃げる
- 赤外線放射によって周囲へ熱を放出する
- パンティングによって熱を逃がす
といった放熱が起こります。
そのため、実際の深部体温が10分間で必ず2.2℃上昇するという意味ではありません。
日射の50~90%を吸収した場合
日射の吸収率を50~90%とすると、犬が実際に吸収する熱は、
約1.1~1.9kcal/分
です。
10分間では約11~19kcalとなります。
放熱を考えなければ、これは10kgの犬の体温を、
約1.1~1.9℃
上げる熱量に相当します。
日向では地面からも熱を受ける
実際の屋外では、犬が受け取る熱は直射日光だけではありません。
日光で温められたアスファルトやコンクリートからも、赤外線放射や熱伝導によって熱を受けます。
特に犬は地面に近いため、人よりも地面からの熱の影響を受けやすくなります。
→ 夏のアスファルトで犬の肉球はやけどする?5秒チェックと熱傷の症状
短時間の日向でも危険になることがある
毛色や被毛の状態、風、外気温、湿度、地面からの照り返しによって、実際の熱収支は大きく変わります。
気温が低く、風があれば、体に入った熱をある程度逃がすことができます。一方、気温や湿度が高く、風が弱い環境では、対流やパンティングによる放熱が十分に働きません。
そのような環境では、短時間でも体内に熱が蓄積し、熱中症になる可能性があります。
→ 犬や猫の熱中症
真夏の日向では、「10分程度だから大丈夫」とは限りません。直射日光だけでも、10kgの犬の体温を1~2℃以上、上げ得る熱量が加わることを知っておく必要があります。
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▼ 関連項目
→ 犬や猫の熱中症
→ 10kgの犬の体温が1℃上がるまで、何分?
→ 夏のアスファルトで犬の肉球はやけどする?5秒チェックと熱傷の症状