犬の健康診断で「心雑音があります」と言われても、普段は元気に生活していることがあります。一方、心臓病が進行すると、咳や呼吸の変化、疲れやすさ、失神などがみられることがあります。
心臓病があることと、心臓病による症状があることは同じではありません。
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
心雑音があっても無症状の犬は多い
犬で多い僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)は、進行性の病気です。
初期には僧帽弁から血液が逆流して心雑音が聞こえていても、犬自身にはほとんど症状がありません。ACVIMでは、このような心不全を起こしていない段階をStage Bと分類しています。
さらにStage Bは、心臓の拡大が明らかでないB1と、心臓が一定以上拡大したB2に分けられます。
つまり、「心雑音がある=心不全」ではありません。
心臓病が進むとどんな症状が出る?
僧帽弁閉鎖不全症が進行して左心不全になると、肺に水分がたまる肺水腫を起こすことがあります。
このとき重要なのが呼吸の変化です。
寝ているときの呼吸数が増える、呼吸が浅く速くなる、呼吸するときにお腹まで大きく動く、横になって眠れない、といった変化がみられることがあります。
咳が出ることもありますが、咳だけで心不全かどうかを判断することはできません。
高齢の小型犬では気管虚脱や気管支疾患も多く、心臓病と呼吸器疾患が同時に存在することもあります。
疲れやすい・散歩を嫌がるのも心臓病?
心拍出量が十分に保てなくなると、以前より運動を嫌がったり、散歩の途中で立ち止まったりすることがあります。
ただし、高齢犬では関節炎、筋力低下、呼吸器疾患などでも同じような変化が起こります。
「最近歩かなくなった=心臓病が悪化した」とは限らないため、他の病気も含めて考える必要があります。
失神することもある
心臓病や不整脈では、一時的に脳への血流が不足して失神することがあります。
突然力が抜けて倒れ、比較的短時間で元に戻る場合には失神の可能性があります。
ただし、てんかん発作や低血糖などでも倒れることがあるため、動画を撮影できれば診断の助けになります。
「心臓病がある」と「心不全になっている」は分けて考える
心雑音が見つかった犬でも、何年間も症状なく生活することがあります。
一方、肺水腫などの心不全を一度起こした犬では、その後の治療や管理が大きく変わります。
そのため心臓病では、単に「心雑音があるか」ではなく、心臓がどの程度大きくなっているのか、心不全を起こしているのか、実際に症状があるのかを分けて評価します。
