犬の耳から強いにおいがする、黒色や茶色の耳垢が増える、頭を何度も振るといった症状は、外耳炎でよく見られます。
犬の耳道は、人のようにまっすぐではありません。入口から下に伸びたあと、横に曲がって鼓膜へ向かうL字型をしています。そのため、通気が悪く、耳垢や水分がたまりやすい構造です。
特に垂れ耳の犬、耳道内に毛が多い犬、アレルギー体質の犬では、湿気や皮脂がこもりやすく、外耳炎を繰り返すことがあります。
黒い耳垢で考えられる原因
黒い耳垢があるからといって、原因がひとつに決まるわけではありません。
乾燥したコーヒーかすのような黒褐色の耳垢が多く、強いかゆみを伴う場合は、ミミヒゼンダニが疑われます。幼犬、保護犬、多頭飼育の犬などで見られやすく、同居動物にも感染することがあります。
赤茶色から暗褐色で、ベタベタした耳垢と甘酸っぱいような発酵臭がある場合は、マラセチアの増殖が考えられます。
黄色や白色のクリーム状の耳垢、膿のような分泌物、強い生臭さがある場合は細菌感染が疑われます。黄緑色の膿と強い腐敗臭、激しい痛みがある場合は、緑膿菌などの治りにくい感染が隠れていることがあります。
耳垢の色やにおいは参考になりますが、見た目だけで原因を確定することはできません。
外耳炎で見られる症状
初期には、耳を掻く、頭を振る、耳を床や家具にこすりつけるといった行動が見られます。
炎症が進むと、耳の入口が赤い、腫れる、耳垢が増える、触ると痛がる、頭をなでられるのを嫌がるといった変化が出ます。
強く頭を振り続けると、耳介の血管が切れ、耳の中に血液がたまる「耳血腫」を起こすことがあります。
さらに炎症が中耳や内耳まで広がると、首を傾ける、ふらつく、まっすぐ歩けない、眼球が細かく揺れるといった神経症状が出ることがあります。この場合は早めの受診が必要です。
外耳炎は複数の原因が重なって起こります
外耳炎では、耳垢の中で増えている菌やマラセチアだけを治療しても、繰り返すことがあります。
背景に、犬アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、ミミヒゼンダニ、異物、内分泌疾患、耳道内の腫瘍などが隠れていることがあるためです。
細菌やマラセチアは、健康な耳にも少数存在します。アレルギーなどによって耳道が炎症を起こし、皮脂や湿気が増えると、これらが異常に増殖して外耳炎を悪化させます。
片耳だけを急に掻き始めた場合は、草の種、砂、小さな異物が耳道内に入った可能性があります。中高齢の犬で片耳だけの外耳炎が治らない場合は、耳道ポリープや腫瘍も考えます。
病院で行う検査
動物病院では、耳介や耳道の入口を確認し、痛み、腫れ、耳道の狭さ、耳血腫の有無を評価します。
耳鏡検査では、耳道の炎症、異物、しこり、鼓膜の状態を確認します。鼓膜に穴が開いている場合、使用できない洗浄液や点耳薬があるため、鼓膜の確認は重要です。
耳垢を顕微鏡で観察する細胞診では、マラセチア、細菌、炎症細胞、ミミヒゼンダニなどを確認します。桿菌が多い場合や、治療しても改善しない場合は、細菌培養検査と薬剤感受性試験を行うことがあります。
治療の基本
外耳炎の治療では、耳垢や膿を取り除き、薬が病変部まで届く状態を作ることが大切です。
軽症では、耳道洗浄と点耳薬を組み合わせます。点耳薬には、抗菌薬、抗真菌薬、抗炎症薬などが含まれ、検査結果に応じて選択します。
耳を触られるのを強く嫌がる犬には、病院で投与する長期作用型の点耳薬が選択肢になることもあります。
耳道が強く腫れている、膿が大量にある、痛みが激しい場合は、鎮静や全身麻酔下で耳道を洗浄することがあります。
慢性化すると、耳道の皮膚が厚くなり、内部が狭くなります。さらに進行すると軟骨が硬くなり、点耳薬が奥まで入らなくなるため、外科治療が必要になることもあります。
自宅で避けたい耳掃除
犬が耳を気にしているときに、綿棒を耳の奥まで入れるのは避けてください。
犬の耳道はL字型のため、耳垢を奥へ押し込んでしまうことがあります。また、炎症を起こした耳道は傷つきやすく、綿棒の摩擦で出血や痛みが悪化することがあります。
人用の消毒液やアルコール、市販の点耳薬を自己判断で使うのも避けてください。鼓膜が傷ついている場合、中耳や内耳に影響を与えることがあります。
耳毛も、無理に根元から抜くと炎症の原因になります。必要な場合は、耳道を傷つけないよう短く整える程度にします。
まとめ
犬の耳から悪臭がする、黒い耳垢が出る場合は、外耳炎が疑われます。
黒い耳垢ではミミヒゼンダニやマラセチア、黄色や緑色の耳垢では細菌感染が考えられますが、見た目だけで原因を決めることはできません。
外耳炎の背景には、アレルギー、異物、内分泌疾患、耳道内腫瘍などが隠れていることがあります。
大切なのは、耳垢を掃除するだけで終わらせず、耳鏡検査や細胞診で原因を確認することです。強い悪臭、黒い耳垢、痛み、頭振りが続く場合は、早めに受診してください。
▼ もう少し考えたい
→ 治療を迷っている方へ
▼ 相談してみたい
→ 腫瘍診療について
→ はじめての方へ